ネイリストの扶養|2026年は所得58万円が基準

ネイリストの扶養の基準を考えるイメージ。ネイル用のポリッシュボトルとジェルライト、電卓、レシートが並ぶ机

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ネイリストが扶養に入れるかどうかは、サロンからもらった金額そのままではなく、そこからジェル代や席料などの経費を引いた残りで決まります。

「扶養から外れないように、売上は年間103万円まで」。ネイリストの間で、いまもよく聞く数字です。

ですが、フリーランスとして働くネイリストの場合、この103万円という数字はそのままあてはまりません。基準になる金額も、2025年分(令和7年分)から変わっています。

この記事では、2026年(令和8年)現在の扶養のルールを整理します。サロン業務委託・シェアサロン・ホームサロン(自宅サロン)・出張ネイルの例で説明します。

ネイリストの「扶養」は2種類あります

まず、いちばん混乱しやすいところを整理します。「扶養」と呼ばれているものは、じつは中身の違う2つの話がまざっています。

  • 税金の扶養…親や配偶者の所得税が安くなる仕組み(配偶者控除・扶養控除など)
  • 健康保険の扶養…親や配偶者の勤め先の健康保険に、保険料を払わずに入れる仕組み(被扶養者)

この2つは、判定する役所も、基準の金額も、金額の数え方も別々です。「税金の扶養からは外れたけれど、健康保険の扶養には残れる」という状態も起こります。

だから、どちらの話をしているのかを分けて考えるのが第一歩です。この記事も、税金の扶養から順に見ていきます。

「扶養に入る」とお金が減るのは自分ではなく相手側

税金の扶養で得をするのは、基本的に「扶養する側」です。

あなたが親の扶養に入っていれば、親の所得税が軽くなります。逆に扶養から外れると、まず増えるのは親や配偶者の税金です。

「扶養を外れたら手取りが激減する」という心配は、健康保険料や国民年金保険料の負担が新しく出てくる場合の話が中心になります。ここも後半で触れます。

税金の扶養:基準は「売上」ではなく「所得」の58万円

ここがこの記事でいちばん大事なところです。

国税庁は、配偶者控除の対象になる配偶者の要件として「年間の合計所得金額が58万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が123万円以下)」としています。扶養控除(16歳以上の子どもや親を扶養する場合)も、同じく「合計所得金額が58万円以下」が要件です。どちらも令和7年分(2025年分)以後の金額で、2026年分の申告でもこの基準です。

注目してほしいのは、カッコの中の「給与のみの場合は123万円以下」という書き方です。よく言われる「103万円の壁」は、パートやアルバイトのように給与をもらっている人の話で、しかもその金額はすでに123万円に上がっています。

そしてフリーランスのネイリストがサロンからもらう報酬は、給与ではありません。給与ではないので、給与向けの123万円という数字は使いません。使うのは、その手前にある「合計所得金額58万円以下」のほうです。

ネイリストの所得は売上からジェルやファイルなどの経費を引いて計算することを表したイラスト

「所得」は、もらった金額から経費を引いた残りです

ネイリストの事業の所得は、次の順番で計算します。

  • 1年間に入ってきた金額(売上)
  • − 仕事のために使った金額(必要経費)
  • − 青色申告特別控除(青色申告をしていて要件を満たす場合)
  • = 事業所得の金額

青色申告特別控除について、国税庁は「不動産所得の金額、事業所得の金額から順次控除します」と説明しています。つまり、この控除を引いたあとの金額が事業所得になり、それが扶養の判定で見る合計所得金額に入っていきます。

これは実務でとても大きな意味を持ちます。売上が同じでも、経費をきちんと集計しているかどうかで、扶養に入れるかどうかが変わってしまうのです。

シェアサロンで働くAさんの例

シェアサロンで施術しているAさんの1年間を、数字にしてみます。

項目内容金額
売上施術料・指名料・物販の合計1,560,000円
経費シェアサロンの席料(月40,000円×12か月)480,000円
経費カラージェル・ベースジェル・トップジェル168,000円
経費ファイル・ビット・ニッパーなどの道具62,000円
経費ネイルチップ・パーツ・ストーン54,000円
経費ジェルネイル技能検定の講習費30,000円
経費予約管理アプリ・スマホ代の仕事分36,000円
経費お客様用の飲み物・お菓子、消耗品30,000円
経費合計—860,000円
差引売上−経費700,000円
青色申告特別控除要件を満たす場合−650,000円
事業所得—50,000円

売上は156万円あります。数字だけ見ると「103万円をとっくに超えているから扶養は無理」と思ってしまいそうです。

でも実際の事業所得は5万円で、58万円以下におさまっています。この場合、税金の扶養の要件(合計所得金額58万円以下)は満たします。

逆に、同じAさんがレシートを捨ててしまって経費を50万円しか出せなかったら、所得は106万円になり、58万円をこえます。レシートを残すことが、そのまま扶養の判定に効いてくるということです。

どこまでが仕事の経費になるのかは、働き方によっても変わります。判断に迷いやすいものはネイリストの経費一覧にまとめていますので、あわせて見てみてください。

58万円を少し超えても、いきなりゼロにはなりません

配偶者の扶養の場合、58万円をこえてもすぐに控除がなくなるわけではありません。

国税庁は、配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下のときは「配偶者特別控除」の対象になるとしています。控除額は、配偶者の所得が増えるにつれて段階的に減っていく形です。

たとえば本人(夫や妻)の合計所得金額が900万円以下の場合、配偶者の所得が58万円超95万円以下なら38万円。130万円超133万円以下なら3万円です。

つまり、所得が59万円になった瞬間に世帯の手取りが崖から落ちるようなことは、税金の面では起きません。「1円でも超えたら大損」と身構えて仕事を断る必要はない、ということです。

ただし、これは配偶者の場合の仕組みです。親の扶養(扶養控除)には、この段階的な受け皿は用意されていません。次に説明する年齢の場合を除いて、58万円をこえると扶養控除はなくなります。

19歳から22歳のネイリストには、新しい受け皿があります

ネイルスクールを出てすぐサロンに入った方、学生のうちからお客様をとり始めた方に関係する話です。

国税庁は「特定親族特別控除」という控除が新しくできたことを公表しています。生計を一にする親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満で、合計所得金額が58万円超123万円以下の人がいる場合に、親などが受けられる控除です。令和7年12月1日に施行され、令和7年分(2025年分)以後の所得税について適用されます。

控除額は次のように、所得に応じて段階的に下がっていきます。

本人(19歳以上23歳未満)の合計所得金額親などが受けられる控除額
58万円超 85万円以下63万円
85万円超 90万円以下61万円
90万円超 95万円以下51万円
95万円超 100万円以下41万円
100万円超 105万円以下31万円
105万円超 110万円以下21万円
110万円超 115万円以下11万円
115万円超 120万円以下6万円
120万円超 123万円以下3万円

合計所得金額が58万円以下であれば、これまでどおり「特定扶養親族」として63万円の扶養控除の対象です。58万円をこえたところから、この特定親族特別控除がバトンを受けとる形になります。

この年齢のうちは、所得が58万円を少しこえても親の控除が急にゼロになりません。指名が増えてきた時期に、売上を無理におさえる必要は小さくなったといえます。

健康保険の扶養:130万円・150万円と「経費を引いたあと」

ここから、もう1つの扶養の話です。手取りへの影響がいちばん大きいのは、実はこちらです。

日本年金機構は、健康保険の被扶養者になる収入の要件を次のように示しています。

  • 年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)
  • 同居している場合は、収入が被保険者(親や配偶者)の収入の半分未満
  • 別居している場合は、収入が被保険者からの仕送り額より少ないこと

さらに、19歳以上23歳未満の方(被保険者の配偶者を除く)については、令和7年10月1日以降の扶養認定から、この年間収入の基準が150万円未満に変わったことも案内されています。年齢は、扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定するとされています。

扶養に入れるか確認するネイリストが、スマホと帳簿・レシートを前にチェックリストを見ているイラスト

自営業のネイリストは「必要経費を引いた額」で見ます

ここでよくある誤解が「130万円は売上そのままの金額でしょう?」というものです。

日本年金機構は、自営業者についての収入額は「当該事業遂行のための必要経費を控除した額」となると明記しています。ですから、ジェル代や席料を引く前の売上だけで、機械的に判定されるわけではありません。

ただし、注意点が2つあります。

1つめは、どこまでを必要経費として認めるかは、加入している健康保険(保険者)の判断になるということです。確定申告で経費にしたものが、すべてそのまま健康保険の判定でも引けるとは限りません。青色申告特別控除のように税金の計算のための控除をどう扱うかも含めて、親や配偶者の勤め先が加入している健康保険に確認してください。

2つめは、見るのが過去の実績ではなく「これから1年の見込み」だという点です。日本年金機構は、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額で判定するとしています。指名が急に増えて月の報酬が上がった場合は、その時点から先を見て判断されることになります。

親が自営業で国民健康保険の場合は、この話がありません

親がサロン経営者や自営業で、家族そろって国民健康保険という方もいます。

国民健康保険は、勤め先の健康保険とは仕組みが違います。厚生労働省は、国民健康保険を「原則として被用者保険等の適用者以外の国民すべてを被保険者とする」制度と説明しています。

保険料(税)についても「世帯単位で算定し、世帯の被保険者ごとに応益分・応能分の各種類を計算し、それらを合計したもの」としています。

つまり、国民健康保険では家族一人ひとりが被保険者です。「保険料がかからない被扶養者」という枠がないので、130万円を意識して売上を止める意味は、保険の面ではありません。この場合に考えるのは、税金の扶養(58万円)と、自分の保険料が所得に応じて増えることだけです。

扶養が気になるネイリストのチェックリスト

年末に慌てないために、いまの時期からできる順番でまとめます。

  1. 誰の、どちらの扶養の話かを決める…親か配偶者か、税金か健康保険か。まずここを紙に書きます。
  2. 1月からの売上を合計する…サロンからの報酬は、源泉徴収で差し引かれる前の総額で数えます。振り込まれた手取りだけで数えると、売上が実際より少なくなります。指名料や物販も忘れずに含めます。
  3. 経費のレシートを全部集める…ジェル・ポリッシュ、ファイル、ビット、パーツ、席料、検定やセミナーの受講料、出張の交通費まで。ここが扶養の判定を左右します。
  4. 売上−経費を出す…この金額が58万円と比べる出発点です。青色申告をしていれば、さらに青色申告特別控除を引きます。
  5. 12月までの見込みを足す…残りの月の予約状況から、年末までの着地を予想します。年間で判定されるので、途中の月だけ見ても答えは出ません。
  6. 健康保険は加入先に確認する…健康保険の被扶養者の判定は、税金とは別に、加入している健康保険が行います。経費の扱いや必要な書類を早めに聞いておくと安心です。
  7. 専従者給与をもらっていないか確認する…国税庁は、控除対象配偶者の要件として「青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと」を挙げています。家族のサロンを手伝って専従者として給与をもらっている場合は、扶養の対象から外れます。

この順番で進めると、「売上はいくらまで?」という漠然とした不安が「経費を集めれば所得はここまで下がる」という具体的な数字に変わります。

扶養に入れても、自分の申告が不要になるわけではありません

最後にひとつ、混同しやすい点です。

扶養に入れるかどうかと、自分が確定申告をするかどうかは別の話です。所得が58万円以下で親の扶養に入れる年でも、記帳と帳簿の保存は求められますし、住民税の申告が必要になる場合もあります。

また、サロンからの報酬で源泉徴収されている方は、申告をすることで払いすぎた所得税が戻ってくることもあります。「扶養だから何もしなくていい」とは考えず、1年分の数字はきちんと出しておいてください。

よくある質問

サロンから「業務委託」でもらう報酬は、給与の123万円で判定してもいいですか?

いいえ。国税庁が示す123万円という金額は「給与のみの場合」の目安です。業務委託の報酬は給与ではないため、この金額はあてはまりません。判定に使うのは合計所得金額58万円以下という基準で、報酬から必要経費(と青色申告特別控除)を引いたあとの金額で見ます。なお、サロンとの契約がパート・アルバイトのような雇用契約で、支払いが給与になっている場合は給与の基準で判定します。自分の契約がどちらか分からないときは、報酬明細に源泉徴収の記載があるか、給与明細の形式かを確認してみてください。

税金の扶養は58万円、健康保険は130万円。どちらに合わせればいいですか?

基準が別々なので、どちらか一方に合わせるという考え方はしません。それぞれ判定して、自分がどの状態にあるかを把握するのが正しい進め方です。実際には「税金の扶養からは外れるが、健康保険の被扶養者には残れる」というケースもあります。手取りへの影響が大きいのは健康保険と国民年金の保険料が新たに発生する場合ですので、そこが不安なときは、親や配偶者が加入している健康保険に見込み額を伝えて相談してください。

ホームサロンの家賃や自分のネイル代も引いて、所得を58万円以下にできますか?

仕事のために使った分は経費になりますが、プライベートと混ざるものは全額ではなく、仕事で使っている割合の分だけを計上します。ホームサロンの家賃や電気代は、サロンとして使っている面積や営業日数などをもとに分けて計算します。金額を大きくすれば所得が下がって扶養に入りやすくなりますが、根拠のない割合で計上すると、あとの税務調査で否認されて税金とペナルティを払うことになりかねません。どうしてその割合にしたのかを説明できるメモを残しておくことが大切です。

制度の内容や運営者については運営者情報もご覧ください。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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