当日キャンセルでいただいたキャンセル料や、店頭で売ったネイルオイルの代金も、ネイリストの「売上」として確定申告に入れるお金です。
確定申告の準備というと、ジェル代やネイルマシンなどの経費集めに目が向きがちです。でも、申告書の出発点は「1年間にいくら入ってきたか」という売上の合計です。
施術代は忘れずに記録していても、キャンセル料や物販の代金は「おまけのお金」と考えて、記録から漏れていることがよくあります。この記事では、ネイリストが売上に入れるお金と、記録のしかたを国税庁の資料をもとに整理します。ホームサロン、シェアサロン、出張ネイル、サロン業務委託のどの働き方の方にも当てはまる内容です。
ネイリストの「売上」は施術代だけではありません
フリーランスのネイリストの所得は、多くの場合「事業所得」として申告します。国税庁のタックスアンサーでは、事業所得は次の式で計算すると説明されています。
総収入金額(売上など)-必要経費=事業所得の金額
ここでいう「総収入金額」には、ふだんの売上だけでなく、次のようなものも含まれると国税庁は示しています。
- お金以外の物や権利などでもらった利益
- 売り物を自分で使ったり、人にあげたりしたときのその商品の価額
- 商品が壊れたことなどで受け取る保険金や損害賠償金
- 空き箱や作業くずなどを売ったお金
つまり「ネイルの仕事に関係して入ってきたお金」は、名前が施術代でなくても、原則として売上側に入ると考えておくと安全です。
売上が漏れていると、所得が本来より少なく計算されます。あとで税務署から指摘されると、本来の税金に加えて加算税や延滞税がかかることがあります。経費を集めるのと同じくらい、売上をもれなく集めることが大切です。
ネイリストが売上に入れるお金の具体例
働き方によって、入ってくるお金の種類は少しずつ違います。代表的なものを表にまとめました。
| 入ってくるお金 | よくある働き方 | 扱い |
|---|---|---|
| 施術代(ジェル・ケア・オフなど) | ホームサロン・シェアサロン・出張ネイル | 売上 |
| 業務委託の報酬(指名料・歩合を含む) | サロン業務委託 | 売上(報酬の総額) |
| キャンセル料・無断キャンセルの料金 | すべての働き方 | 売上 |
| ネイルオイル・ケア用品などの物販代 | ホームサロン・シェアサロン | 売上 |
| ネイルチップの販売代 | オンライン販売・店頭販売 | 売上 |
| 出張料・交通費として受け取ったお金 | 出張ネイル | 売上 |
| 講習・レッスンの受講料 | 技術を教えている人 | 売上 |
キャンセル料は「売上の代わり」のお金
キャンセル料は、本来その時間に施術して得られたはずの売上を補うためのお金です。国税庁は、損害賠償金などの名目であっても「収入金額に代わる性質を持つもの」は非課税にならず、事業所得の収入になるという考え方を示しています。
たとえば、当日キャンセルで施術代6,000円の50%にあたる3,000円を受け取ったなら、その3,000円は売上として記録します。予約サイトやキャッシュレス決済で受け取った場合も、現金で受け取った場合も同じです。
なお、消費税の世界では、キャンセル料は「失った利益の補償」として消費税の対象外と整理されています(消費税法基本通達5-5-2)。ただし、売上が1,000万円以下で消費税の納税が免除されている多くのネイリストにとっては、まず所得税の売上に入れることを押さえておけば十分です。インボイスの登録をしている人は、消費税の申告で区分が必要になるため、個別に確認してください。
物販の代金は施術代と分けて記録すると便利です
施術のあとにネイルオイルやハンドクリームを販売している場合、その代金も売上です。仕入れた商品の代金は経費になるため、売上と経費の両方に出てきます。
帳簿では「施術売上」と「物販売上」を分けておくと、どちらでどれだけ稼いでいるかが一目でわかります。年末に売れ残った商品があれば、在庫として数える作業も必要になります。
売り物を自分や家族で使ったときも記録が必要です
意外と見落としやすいのが、販売用に仕入れたネイルオイルを自分で使ったり、友人にプレゼントしたりしたケースです。国税庁は、売り物を自家用に使ったり贈ったりしたときは、その商品の価額を総収入金額に入れると示しています。
金額は原則として「ふだん売っている値段」です。ただし所得税基本通達39-2では、仕入れ値以上の金額で帳簿に記録していれば、通常の販売価額のおおむね70%未満でない限り認めるとされています。迷ったら販売価格の70%と仕入れ値のうち高いほうで記録しておくと、目安になります。
一方、施術用に買ったジェルやポリッシュは売り物ではないため、この扱いとは別です。材料費として経費にできるものはネイリストの経費一覧で確認できます。
業務委託の報酬は「明細の総額」が基本です
サロン業務委託で働くネイリストは、サロンから毎月の報酬を受け取ります。報酬明細には、基本の歩合のほかに指名料やキャンセル分の補償などが含まれていることがあります。
売上として記録するのは、源泉徴収される前の報酬の総額です。振り込まれた金額だけを売上にすると、差し引かれた税金の分だけ売上が少なくなってしまいます。差し引かれた源泉徴収税額は、確定申告で「すでに払った税金」として差し引けます。
サロンによっては、材料費や席代を報酬から差し引いて振り込むこともあります。その場合も、差し引かれる前の報酬を売上に、差し引かれた材料費や席代を経費に分けて記録します。明細は毎月そのまま保管しておきましょう。
例:ホームサロンを営むAさんの1年間の売上
自宅でホームサロンを営むAさんの1年間を例に、売上の集め方を見てみましょう。金額はわかりやすくするための架空の数字です。
| 項目 | 1年間の金額 |
|---|---|
| 施術代(ジェル・ケアなど) | 3,000,000円 |
| キャンセル料 | 45,000円 |
| ネイルオイルなどの物販代 | 80,000円 |
| 売り物を自分で使った分 | 6,000円 |
| 売上の合計 | 3,131,000円 |
もしAさんが施術代だけを売上にしていたら、131,000円分の売上が申告から抜けてしまいます。1回あたりは小さな金額でも、1年分を合計すると無視できない額になります。逆にいえば、物販の仕入れ代や決済手数料などの経費もきちんと拾えば、正しい所得で申告できます。
このように、売上と経費は「両方そろえて」はじめて正しい所得になります。売上だけ、経費だけを集めるのではなく、同じ月の明細を並べて確認する習慣をつけると、申告の前に慌てずにすみます。
売上の記録もれを防ぐ手順とチェックリスト
年明けにまとめて思い出そうとすると、キャンセル料や物販は必ず抜けます。10月から年末の今のうちに、次の手順で1年分を見直しておくと安心です。
ステップ1:お金が入ってくる「入口」を書き出す
現金、銀行口座、キャッシュレス決済、予約サイト、ネットショップ、サロンからの振込など、お金が入ってくる場所をすべて書き出します。入口ごとに1年分の入金を確認すれば、もれが見つかりやすくなります。
ステップ2:入金の明細を月ごとに集める
キャッシュレス決済や予約サイトは、管理画面から入金明細をダウンロードできることが多いです。決済手数料が差し引かれて入金される場合は、差し引かれる前の金額を売上に、手数料を経費に分けて記録します。
ステップ3:現金の売上はその日のうちにメモする
現金で受け取った施術代やキャンセル料は、記録しないと証拠が残りません。日付、お客様ごとの金額、内容(施術・物販・キャンセル料)をスマホのメモや帳簿アプリにその日のうちに残します。
ステップ4:入口ごとの合計と帳簿の売上を見比べる
最後に、ステップ1で書き出した入口ごとの1年分の入金合計と、帳簿に記録した売上の合計を見比べます。帳簿の売上のほうが少なければ、どこかに記録もれがあるサインです。キャンセル料や物販、ネットで売ったネイルチップの代金から順に確認すると、原因が見つかりやすくなります。
年末までのチェックリスト
- キャンセル料を受け取った日と金額を記録している
- 物販の代金を施術代と分けて記録している
- 販売用の商品を自分で使った・贈った分をメモしている
- 業務委託の報酬は、源泉徴収される前の総額で記録している
- 決済手数料は売上から引かずに、経費として別に記録している
- ネイルチップのネット販売やレッスン料も売上に入れている
- 報酬明細や入金明細を1年分そろえている
帳簿づけが苦手な方は、明細やレシートをそのまま送るだけで任せられるサービスを使うのも一つの方法です。当サイトは、税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスです。運営者については運営者情報をご覧ください。
よくある質問
キャンセル料を受け取らずに免除した場合も売上になりますか?
実際に受け取っていないお金は売上として記録する必要はありません。売上に入れるのは、実際に受け取ったキャンセル料です。あとからまとめて受け取る約束をしている場合など、いつの売上にするか迷うときは個別にご相談ください。
お客様からいただいた差し入れのお菓子も売上ですか?
お礼の気持ちとして受け取るお菓子などを、いちいち売上として記録する必要があるケースは通常ありません。ただし、施術代の代わりに品物を受け取った場合は、お金以外の物でもらった収入として売上に入れる必要があります。
物販の売上が少額でも申告に入れる必要がありますか?
はい。ネイルの仕事に付随する物販は、金額の大小にかかわらず事業の売上として合計します。少額だから省いてよいというルールはありません。仕入れた商品代は経費になるので、売上と経費の両方をきちんと記録しましょう。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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