2026年分(令和8年分)から所得税の基礎控除が引き上げられ、ネイリストが「確定申告をしなければいけないライン」も変わりました。
「サロンの業務委託でこれくらい稼いだけれど、申告っているの?」「親の扶養から外れちゃうのかな」。この記事は、そんな疑問をお持ちのフリーランスネイリストさんに向けたものです。国税庁が公表している資料をもとに、2026年からの新しい金額を、できるだけやさしい言葉で整理しました。
2026年分から「基礎控除104万円」に変わりました
まず、いちばん大きな変更点からお伝えします。
基礎控除とは、収入のある人なら誰でも差し引ける「非課税の枠」のことです。この枠が大きいほど、税金のかかる部分は小さくなります。
令和8年度税制改正で、この基礎控除が引き上げられました。この改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分(2026年1月〜12月)以後の所得税から適用されます。つまり、いま働いている2026年の分から、新しい金額で計算されるということです。
| 合計所得金額 | 基礎控除額(令和8年分・令和9年分) |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 62万円 |
ほとんどのネイリストさんは、いちばん上の「489万円以下」に当てはまります。2026年分の基礎控除は104万円、と覚えておけば大丈夫です。
サロンから給与をもらっている人は「178万円」も関係します
同じ改正で、給与をもらっている人の「給与所得控除」の最低保障額も、65万円から74万円に引き上げられました。
給与だけで働いている場合、この74万円と基礎控除104万円を足した178万円までは、所得税がかからない計算になります。サロンに雇われて給与をもらっている方、パートとネイルを掛け持ちしている方は、この数字も頭の片隅に置いておいてください。
なお、令和10年分以後はまた見直される予定です。今後は2年ごとに物価の動きに応じて金額を見直すしくみも入りました。数字は変わっていくもの、という前提で毎年確認するのが安心です。
ネイリストは「いくらから」確定申告が必要?

ここからが本題です。まず、計算の順番を押さえましょう。
- お客様からいただいた金額の合計(=売上)
- そこから、仕事に使ったお金(=経費)を引く
- 残った金額が「所得」
- その所得から、基礎控除などの「所得控除」を引く
- それでもまだ金額が残り、税額が出るなら確定申告が必要
国税庁も「その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合」に確定申告が必要としています。売上そのものではなく、経費を引いたあとの金額で判断するのがポイントです。
ジェルやポリッシュ、ネイルマシン、UVライト、集塵機、筆やニッパー、チップやパーツ、検定・セミナーの受講料、シェアサロンの利用料、出張ネイルの交通費。こうした支出は経費になります。何が経費になるかはネイリストの経費一覧で確認してみてください。
例1:シェアサロンで働くAさん(売上240万円)
- 年間の売上:240万円
- 経費:ジェル・ポリッシュ18万円、ネイルマシンとライト6万円、筆・ニッパー3万円、チップ・パーツ4万円、シェアサロン利用料60万円、検定・セミナー4万円、スマホ代など5万円 → 合計100万円
- 所得:240万円 − 100万円 = 140万円
- 青色申告特別控除65万円を差し引くと = 75万円
- 基礎控除104万円を引くと、残りはゼロ → 所得税はかかりません
ここで大事なことがあります。この「ゼロ」は、青色申告特別控除65万円が使えた場合の結果です。申告をしなければこの控除は使えません。「税金がかからないから申告しなくていい」ではなく、「申告するから税金がかからない」というケースがある、と覚えてください。
例2:業務委託サロンで働くBさん(報酬380万円)
- 年間の報酬:380万円
- 経費:材料費・道具代・研修費・交通費などで130万円
- 所得:380万円 − 130万円 = 250万円
- 青色申告特別控除65万円を差し引くと = 185万円
- 基礎控除104万円を引くと81万円。ここからさらに、国民年金保険料や国民健康保険料などの控除を引いて税額を計算します
Bさんは確定申告が必要です。ただし、支払った国民年金保険料や国民健康保険料は全額差し引けます。生命保険料やiDeCoの掛金なども対象です。控除を漏らさないことが、そのまま節税になります。
パートと掛け持ちの副業ネイリストは「20万円」がライン
昼はサロンや別の仕事でお給料をもらい、休みの日に自宅サロンや出張ネイルをしている。そんな方は考え方が少し違います。
1か所からお給料をもらっていて年末調整を受けている場合、給与以外の所得の合計が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。なお、給与の年間収入が2,000万円を超える人などは別の扱いです。
ここでの20万円も、売上ではなく「売上−経費」の金額です。ネイルの売上が45万円で材料費などが28万円なら、所得は17万円。この場合、所得税の確定申告は不要になります。
ただし注意点がひとつ。この20万円のルールは所得税の話で、住民税は別です。所得税の申告が不要でも、お住まいの市区町村への申告が必要になることがあります。判断に迷ったら市区町村の窓口に確認してください。
親や配偶者の「扶養」は所得62万円まで
「扶養から外れると家族の税金が増えるから気をつけて」と言われたことはありませんか。この扶養のラインも、2026年分から変わりました。
| 区分 | 合計所得金額の条件(令和8年分・令和9年分) |
|---|---|
| 扶養親族・同一生計配偶者 | 62万円以下(改正前は58万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 62万円超133万円以下 |
| 19歳以上23歳未満の「特定親族」 | 62万円超123万円以下 |
| 勤労学生 | 89万円以下 |
ここで気をつけていただきたいのが、「所得税がかからないライン」と「扶養に入れるライン」は別物だということです。
さきほどの例1のAさんは、青色申告特別控除を引いたあとの所得が75万円でした。自分に所得税はかかりません。でも62万円は超えているので、親の扶養からは外れます。「税金ゼロだったから大丈夫」と思っていたら、あとからご家族の税金が増えていた、ということが起こり得ます。
青色申告特別控除で扶養に残れることもあります
扶養の判定に使う「合計所得金額」は、青色申告特別控除を引いたあとの金額です。ここを知っているかどうかで結果が変わります。
- ホームサロンの売上90万円、材料費など経費20万円 → 所得70万円
- このままだと62万円を超えるので、扶養から外れます
- 青色申告特別控除65万円が使えれば、所得は5万円。62万円以下におさまります
ただし65万円の控除には条件があります(後ほど説明します)。条件を満たしていないと10万円の控除になり、所得は60万円。この場合もぎりぎり62万円以下ですが、売上や経費が少し動けば結果は変わります。早めに準備しておきたいところです。
健康保険の扶養は、税金の扶養とは別のルールです
ここも混同しやすいところです。ご家族の健康保険に被扶養者として入れるかどうかは、税金とはまったく別の基準で判断されます。判断するのは加入している健康保険(勤務先の健康保険組合や協会けんぽ)です。
収入の数え方や必要書類も加入先によって異なります。「税金の扶養に入れたから健康保険も大丈夫」とは限りません。ご家族の勤務先を通じて、加入先に確認してください。
いまからできる5つのチェックリスト

2026年はまだ折り返したところです。いま動けば、来年の申告はかなりラクになります。
1.ネイル専用の口座とカードを分ける
いちばん効果が大きいのがこれです。材料の仕入れ、シェアサロンの利用料、講習費。これらの入出金をひとつの口座にまとめておくと、あとから見返す手間が激減します。
2.レシートを月ごとの封筒に入れておく
凝った整理は必要ありません。「8月」と書いた封筒に、その月のレシートを入れていくだけで十分です。ネット通販の明細は、その都度保存フォルダに入れておきましょう。
3.売上をその日のうちにメモする
予約管理アプリの記録でも、手帳でも構いません。現金でいただいた分は特に忘れやすいので、施術が終わったらその場で残す習慣にしてしまうのが確実です。
4.開業届と青色申告承認申請書を出す
青色申告特別控除を使うには、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を出しておく必要があります。提出期限は、原則としてその年の3月15日まで。ただし、その年の1月16日以後に新しく事業を始めた場合は、事業を始めた日から2か月以内です。
すでに開業していて2026年分の申請をまだ出していない方は、2026年分は青色申告の対象になりません。2027年分から適用を受けるために、2027年3月15日までの提出を予定しておきましょう。あわせて「個人事業の開業・廃業等届出書」も提出します。
5.65万円控除の条件を確認する
青色申告特別控除の65万円を受けるには、次のすべてを満たす必要があります。
- 事業として営んでいること
- 複式簿記で帳簿をつけていること
- 貸借対照表と損益計算書を添付して、申告期限までに提出すること
- e-Taxで申告すること(または一定の要件を満たす電子帳簿保存を行うこと)
期限に1日でも遅れると、65万円ではなく10万円の控除になります。差額の55万円分がまるごと課税対象に戻る計算です。期限内に出すことが、いちばん確実な節税だと言っても言いすぎではありません。
2026年分の申告期間は、原則として2027年2月16日から3月15日までです。
よくある質問
売上が少なくて所得税がかからない年でも、申告はしたほうがいいですか?
申告義務がない場合でも、しておいたほうがよい場面は多くあります。青色申告特別控除は、期限内に申告しないと使えません。報酬から税金が引かれていた場合は、申告することで戻ってくることがあります。国民健康保険料の計算や、保育園・住宅ローンなどで所得を証明したいときにも、申告した記録が役に立ちます。
業務委託の報酬明細に「源泉徴収税額」と書かれています。どうすればいいですか?
その金額は、あなたの所得税として先に納められている分です。確定申告のときに、1年分の税額と精算します。計算した税額よりも引かれていた金額のほうが多ければ、差額が戻ってきます。報酬明細は捨てずに1年分そろえて保管しておいてください。金額が明細に書かれていない場合は、サロンに確認しましょう。
2026年分の新しい基礎控除は、いつの申告から関係しますか?
2027年の春に行う、2026年分(令和8年分)の確定申告からです。この改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。すでに終わっている2025年分(令和7年分)の申告は、改正前の金額で計算されています。
この記事で紹介した金額は、国税庁が公表している「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」やタックスアンサーに基づいています。最新の金額は国税庁のサイトでもご確認ください。当サイトを運営しているのは、税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスです。くわしくは運営者情報をご覧ください。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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