自宅サロンの電気代・水道代は、仕事で使った分だけを「按分(あんぶん)」して経費にできます。この記事では、その割合の決め方と、年末までに準備しておきたいことをネイリスト向けにまとめました。
水道光熱費は「仕事で使った分」だけが経費になる
ジェルライトやネイルマシン、集塵機は、どれも電気で動きます。冬は暖房、夏は冷房もつけっぱなしになりがちです。お客様の手を洗うお湯や、タオルの洗濯にも水道とガスを使います。
ホームサロン(自宅サロン)では、こうした電気代・水道代・ガス代が、生活の分とまとめて1枚の請求になります。ここで出てくるのが「家事関連費(かじかんれんひ)」という考え方です。
家事関連費とは
家事関連費とは、生活と仕事の両方にかかわる支出のことです。国税庁のタックスアンサー「No.2210 必要経費の知識」では、店舗併用住宅の家賃や水道光熱費が例として挙げられています。
そして、経費にできるのは「仕事に直接必要だったと明らかに区分できる部分」に限られる、とされています。つまり、電気代の全額ではなく、仕事で使った分だけを取り出して経費にする、ということです。この取り出す作業を「按分」と呼びます。
割合は「使用面積」「点灯時間」などで決める
では、何を基準に分ければよいのでしょうか。国税庁の「収支内訳書(一般用)の書き方」には、家事分と事業分の区分は「使用面積や保険金額、点灯時間などの適切な基準によってあん分して計算します」と書かれています。
たとえば、電気代なら施術中に照明やライトをつけている「点灯時間」、家全体のうち施術スペースが占める「使用面積」などが基準になります。
決まった割合が国から示されているわけではありません。自分のサロンの使い方に合った基準を選び、「なぜその割合なのか」を説明できるようにしておくことが大切です。
白色申告でも、区分できれば経費にできる
「白色申告だと按分は認められない」と聞いたことがある人もいるかもしれません。所得税基本通達45-2では、仕事に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定するとしつつ、50%以下でも「必要である部分を明らかに区分することができる場合」は経費にしてよい、とされています。
青色申告の場合は、所得税法施行令96条で「取引の記録などに基づいて、仕事に直接必要だったことが明らかにされる部分」を経費にできるとされています。帳簿や記録があることが前提になっている、という点を押さえておきましょう。
青色申告でも白色申告でも、ポイントは同じです。「仕事で使った分をはっきり分けられるか」。そのための記録が、この記事の後半で紹介するメモです。
ネイリストの働き方別|どこまで経費になる?
同じネイリストでも、働く場所によって水道光熱費の扱いは大きく変わります。まずは自分がどれに当たるかを確認しましょう。
| 働き方 | 水道光熱費の考え方 |
|---|---|
| ホームサロン(自宅サロン) | 施術スペースと営業時間をもとに按分して経費にできる |
| サロン業務委託 | サロンが負担していれば、自分の経費にはならない |
| シェアサロン | 席代に光熱費が含まれていることが多く、席代を経費にする |
| 出張ネイル | 自宅で準備や機材の充電をする分は、説明できる範囲で按分 |
ホームサロンは按分の中心
ホームサロンでは、施術用の部屋や一角で使う照明、ジェルライト、エアコンなどが仕事の電気代になります。お客様の手洗いやタオルの洗濯に使う水道代・ガス代も、仕事の分があれば按分の対象です。
家賃の按分と考え方は似ています。家賃の分け方は、ネイリストの経費一覧もあわせて確認しておくと、全体像がつかみやすくなります。
業務委託・シェアサロンは「誰が払っているか」
サロンで業務委託として働く場合、店舗の電気代は通常サロンが払っています。自分が負担していない費用は、自分の経費にはなりません。
シェアサロンの場合も、光熱費は席代や利用料に含まれていることがほとんどです。その場合は席代そのものを経費として記帳します。光熱費を別に請求されているなら、その請求分が経費になります。
一方で、自宅でネイルチップを作ったり、サンプルを撮影したりしている時間が長い人もいるでしょう。その作業が仕事のためで、時間を説明できるなら、自宅の電気代の一部を按分する余地はあります。ただし、割合はホームサロンより小さくなるのが自然です。
計算例|電気代を「時間」で分ける
ここでは、考え方をつかむための架空の例で計算してみます。
- ある月の電気代:12,000円
- サロンの営業:月20日×1日6時間=120時間
- 自宅で電気を使っている時間:1日のうち起きている時間を目安に月480時間
この場合、120時間÷480時間=25%です。12,000円×25%=3,000円が、その月の仕事分の電気代の目安になります。
ほかにも、家全体の面積に占める施術スペースの割合で分ける方法もあります。どの方法でも、いったん決めた基準は年の途中でころころ変えないほうが、あとで説明しやすくなります。
水道代・ガス代は控えめに考える
水道代やガス代は、料理やお風呂など生活での使用量がかなり大きいものです。ネイルの施術で使う量は、電気代に比べると少ないのがふつうです。
タオルを1日何枚洗うか、お客様の手洗いが何回あるか、といった実態から考えて、無理のない割合にとどめましょう。説明できない高い割合を使うと、かえって損をする原因になります。
サロン専用のメーターがあれば話は簡単
自宅の離れや別の部屋に、サロン専用の電気契約やメーターがある場合は、その分は仕事の分として明確に区分できます。按分の計算が不要になるため、記録の手間も大きく減ります。開業時や改装時に検討してみる価値はあります。
ネイリストがやりがちな失敗3つ
按分でつまずきやすいのは、計算そのものより「考え方のズレ」です。次の3つに心当たりがないか確認してみてください。
- 電気代を全額経費にしている:生活でも使っている以上、全額は説明がつきません。家族が暮らす家ならなおさらです。
- なんとなく50%にしている:根拠のない数字は、聞かれたときに答えられません。面積か時間か、基準を1つ決めましょう。
- 休業した月も同じ割合で計算している:産休や体調不良で長く休んだ月は、営業時間が大きく減ります。実態に合わせて見直しましょう。
逆に言えば、この3つを避けるだけで、按分はぐっと説明しやすくなります。完璧な計算を目指すより、「自分のサロンの実態に合っているか」を基準に考えるのがコツです。
ジェルライトの電気代はどれくらい?
「ジェルライトだけの電気代を計算したい」という声もよく聞きます。機器ごとの消費電力は、本体や取扱説明書に書かれていることが多いです。ただ、機器ごとに細かく積み上げるのは手間がかかります。
実際には、照明やエアコンも含めた「サロンを営業している時間」でまとめて分けるほうが、続けやすく説明もしやすい方法です。続けられる方法を選ぶことが、正しい申告への近道です。
年末までにやっておきたい準備チェックリスト
確定申告の直前にまとめて計算しようとすると、「何を基準にしたか」が思い出せなくなります。今のうちから、次の準備を進めておきましょう。
1.1年分の請求をそろえる
電気・水道・ガスの検針票や請求書を、1月分から集めます。最近は紙が届かず、Web明細だけという人も多いはずです。その場合は、各社のマイページから明細をPDFなどで保存しておくと安心です。
2.按分の基準をメモに残す
「施術スペースは家全体の何割か」「営業日と営業時間はどれくらいか」を、1枚のメモにまとめます。予約管理アプリの予約履歴や、施術スペースの間取りがわかるものがあると、根拠として使いやすくなります。
3.帳簿のつけ方を決める
按分の記帳には、主に2つのやり方があります。毎月、仕事分だけを「水道光熱費」として記帳する方法。もう1つは、年末にまとめて1年分の仕事分を経費に振り替える方法です。どちらでも構いませんが、途中で混ぜないことが大切です。
チェックリスト
- 電気・水道・ガスの1月分からの請求がそろっている
- Web明細はPDFなどで保存している
- 按分の基準(面積・時間など)を1つに決めた
- その基準の根拠をメモに残した
- 水道代・ガス代は無理のない割合にしている
- 業務委託先やシェアサロンが負担している分を、二重に経費にしていない
- 帳簿のつけ方(毎月か年末か)を決めた
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よくある質問
電気代の契約が家族の名義です。経費にできますか?
出発点は「実際にあなたが負担しているかどうか」です。自分が負担していない費用は、自分の経費にはできません。名義と支払いが分かれているケースは扱いが複雑になりやすいため、個別に相談することをおすすめします。
按分の割合は何%までなら大丈夫ですか?
国が「何%まで」と決めているわけではありません。国税庁は、使用面積や点灯時間などの適切な基準で按分するとしています。大切なのは数字の大きさではなく、自分の使い方に合った根拠を説明できるかどうかです。
今年の分を、まだ1円も経費にしていません。今からでも間に合いますか?
今年の分は、確定申告のときに1年分まとめて計算することもできます。1月分からの請求をそろえ、按分の基準を決めておけば、年末にまとめて振り替える方法で対応できます。まずは明細を集めるところから始めましょう。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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