白色申告のネイリストが確定申告書と一緒に出す「収支内訳書」は、1年間の売上と経費を2ページにまとめる書類で、毎日の簡単な帳簿があれば作成コーナーや会計ソフトで仕上げられます。
「青色申告の申請はしていないけれど、確定申告は自分でやらなければいけない」。そんなネイリストの方が必ず作るのが収支内訳書です。名前は難しそうですが、書く中身は「いくら稼いで、いくら使ったか」の一覧です。
この記事では、サロン業務委託・シェアサロン・ホームサロン・出張ネイルで働くネイリストの方に向けて、収支内訳書の各欄に何を書くのかを、国税庁の「収支内訳書(一般用)の書き方」に沿って説明します。年内にやっておくと楽になる準備も最後にまとめました。
収支内訳書とは何ですか
収支内訳書は、白色申告の方が確定申告書に添えて出す書類です。国税庁は、白色申告の方が確定申告書を出すときには、収入や経費の中身を書いた書類(収支内訳書など)の添付が必要だと案内しています。
青色申告の方は「青色申告決算書」を出すので、収支内訳書は使いません。ネイリストの仕事は、ふつう「一般用」の収支内訳書を使います。
この記事は、税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスがまとめています(運営者情報)。
白色申告でも帳簿は必要です
「白色申告なら帳簿はいらない」と思っている方もいますが、これは誤解です。事業所得がある方は、白色申告でも記帳と帳簿の保存が必要です。収支内訳書は、この帳簿の数字をまとめて作ります。
ただし、白色申告の帳簿は簡単な方法で構いません。国税庁は、取引を1件ずつではなく、日ごとの合計金額をまとめて書くような簡易な方法でもよいとしています。たとえば「10月5日 施術売上の合計」と1行で書く形でも大丈夫です。
帳簿やレシートの保存期間も決まっています。白色申告の場合は次のとおりです。
| 保存するもの | 保存期間 |
|---|---|
| 売上や経費を書いた帳簿 | 7年 |
| それ以外の帳簿(メモ的な帳簿など) | 5年 |
| 年末の在庫を数えた表などの決算の書類 | 5年 |
| 請求書・納品書・領収書・レシートなど | 5年 |
なお、2023年分(令和5年分)の申告に対する修正申告などからは、売上の帳簿を保存していなかったり、記載が不十分だったりした場合に、加算税の割合が上乗せされる仕組みも始まっています。白色申告でも、売上の記録は特に丁寧に残しておきましょう。
1ページ目:売上・経費・所得を書く
収支内訳書は2ページの書類です。1ページ目には1年間の合計を書き、2ページ目にはその内訳を書きます。まず1ページ目の主な欄を見てみましょう。
| 欄 | 書く内容 | ネイリストの例 |
|---|---|---|
| 売上(収入)金額 | 1年間の売上の合計 | 施術代、業務委託の報酬、指名料、出張料、ネイルチップの販売代 |
| 家事消費 | 売り物の商品を自分や家族で使った分など | 販売用に仕入れたネイルオイルを自分で使った場合など |
| その他の収入 | 本業の売上以外の事業の収入 | 空き箱の売却代やリベートなど |
| 売上原価 | 販売した商品の仕入れ | 販売用のネイルチップやケア用品の仕入れ |
| 経費 | 科目ごとの経費の合計 | 消耗品費、地代家賃、水道光熱費、通信費など |
| 専従者控除 | 家族が専属で手伝っている場合の控除 | 受付や予約対応を専属で手伝う配偶者がいる場合 |
| 所得金額 | 売上から経費などを引いた残り | 確定申告書に書き写す金額 |
売上:入金した日ではなく「仕事をした年」で数える
売上欄には、1月1日から12月31日までの売上を書きます。国税庁の書き方では、掛け売りなど代金をまだ受け取っていない売上も、その年の収入に含めるとされています。
サロン業務委託の方は、ここで間違えやすいので注意してください。たとえば12月に施術した分の報酬が、翌年1月に振り込まれる場合があります。この12月分も、今年の売上として数えるのが基本です。
サロンから報酬を受け取るときに源泉徴収(報酬から先に所得税を差し引くこと)をされている場合は、差し引かれる前の金額を売上に書きます。差し引かれた税金は、確定申告書の側で精算します。報酬明細を1年分そろえておくと確認が楽になります。
家事消費とその他の収入:使わない方も多い欄です
家事消費は、売り物として仕入れた商品を自分や家族のために使ったり、人にあげたりした場合に書く欄です。施術が中心で物販をしていない方は、書くものがないことがほとんどです。物販をしていて該当しそうな場合は、金額の決め方にルールがあるので確認してから書きましょう。
その他の収入には、国税庁の説明では空き箱の売却代やリベートなどが入ります。施術や業務委託の報酬はここではなく、売上欄に書いてください。
経費:科目ごとに帳簿の合計を書く
経費は、帳簿の科目ごとの合計を書き写します。ネイリストの経費は、たとえば次の科目に入ることが多いです。どんな支払いが経費になるかは、ネイリストの経費一覧でも確認できます。
- 消耗品費:ジェル、ポリッシュ、筆、ニッパー、ファイル、コットン、10万円未満のネイルマシンやUVライトなど
- 地代家賃:シェアサロンの席代、サロンの家賃、自宅サロンの家賃のうち仕事で使う部分
- 水道光熱費:自宅サロンの電気代のうち仕事で使う部分
- 通信費:スマホ代のうち仕事で使う部分
- 旅費交通費:出張ネイルやサロンへの電車代、バス代
- 広告宣伝費:チラシ代、SNS広告の費用
自宅の家賃や電気代、スマホ代のように仕事と生活の両方で使うものは、全額を経費にはできません。国税庁は、使った面積や時間などの適切な基準で分けて計算するよう案内しています。どの割合にしたのか、理由をメモしておきましょう。
一方で、所得税・住民税・国民健康保険税・国民年金の保険料は、経費にはなりません。国民健康保険や国民年金は、経費ではなく確定申告書の「社会保険料控除」で差し引きます。
専従者控除:家族が手伝っている場合だけ使います
白色申告では、家族に給与を払っても、そのまま経費にはできません。その代わりに「事業専従者控除」という仕組みがあります。生計を一にする15歳以上の家族が、1年のうち6か月を超えて専らあなたの仕事を手伝っている場合に使えます。
控除できるのは、配偶者なら86万円、配偶者以外の家族なら1人50万円です。ただし、控除前の所得を「専従者の人数+1」で割った金額のほうが少なければ、そちらが上限になります。また、専従者にした家族については、配偶者控除や扶養控除は受けられません。どちらが得になるかは、家族の状況によって変わります。
2ページ目:内訳を書く
2ページ目には、1ページ目の数字の内訳を書きます。ネイリストの方が関係しやすいのは次の3つです。
売上(収入)金額の明細
業務委託先のサロンなど、主な売上先の名前と所在地、売上金額を書きます。国税庁の書き方では、売上先の登録番号(インボイスの番号)や法人番号が分かっていればそれを書き、その場合は名前と所在地を省略してもよいとされています。
サロンを掛け持ちしている方は、サロンごとに1年分の報酬を合計しておくとスムーズです。ホームサロンや出張ネイルでお客様から直接代金を受け取る方は、まず帳簿の売上合計と1ページ目の売上金額が合っているかを確認しましょう。
減価償却費の計算
高い機材は、買った年に全額を経費にするのではなく、何年かに分けて経費にします。これを減価償却といいます。国税庁の書き方では、次のように扱うとされています。
- 10万円未満のもの:使い始めた年に全額を経費にできる(消耗品費などに入れる)
- 10万円以上20万円未満のもの:3年間で3分の1ずつ経費にする方法を選べる
- それ以上のもの:耐用年数に応じて、この欄で毎年の経費を計算する
たとえば施術用のチェアや集塵機、ホームサロンの内装などで高額なものを買った場合は、この欄で計算することになります。青色申告の方だけが使える少額の特例もありますが、白色申告では使えない点に注意してください。
地代家賃の内訳
サロンやシェアサロン、自宅サロンの家賃を経費にしている場合は、支払先や1年間の支払額、そのうち経費にした金額を書きます。自宅サロンで家賃の一部だけを経費にしている場合は、全体の支払額と経費にした金額の違いが分かるように書きます。
年内から始める準備チェックリスト
2026年分の確定申告の期間は、2027年2月16日から3月15日までです。収支内訳書は年が明けてから作りますが、材料は年内に集めておくと慌てずに済みます。
- 1月から今月までの売上を帳簿に書けているか確認する(日ごとの合計でも構いません)
- 業務委託先サロンの報酬明細を1年分そろえ、サロンごとの合計を出す
- 12月に施術して翌年1月に入金される報酬がないか確認する
- ジェル・ポリッシュ・パーツなどのレシートを1か所にまとめる
- 今年買ったネイルマシン、UVライト、チェアなどの購入日と金額を一覧にする
- 自宅の家賃・電気代・スマホ代を経費にする割合と、その理由をメモする
- 家族に手伝ってもらっている場合は、手伝った期間と内容を記録しておく
収支内訳書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、画面の案内に沿って金額を入力すれば作れます。会計ソフトを使っている方は、帳簿から自動で作ることもできます。なお、様式は年分ごとに更新されることがあるため、2026年分の申告では2026年分用の様式を使ってください。
来年から青色申告に切り替えたい場合は、青色申告をしたい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を出す必要があります。2027年分から青色申告にするなら、2027年3月15日が期限です。
よくある質問
業務委託の報酬だけでも収支内訳書は必要ですか
業務委託の報酬を事業所得として白色申告する場合は、収支内訳書を作って確定申告書に添付します。ジェル代や交通費などの経費を差し引くためにも、収支内訳書で売上と経費をまとめることが大切です。
レシートも一緒に提出するのですか
レシートや領収書は提出せず、手元で保存します。白色申告の場合、領収書などの書類は5年間、売上や経費を書いた帳簿は7年間の保存が必要です。
収支内訳書を書き間違えたまま出してしまったらどうなりますか
期限内であれば、出し直して訂正できます。期限後に誤りに気づいた場合は、税金が少なすぎたときは修正申告、多すぎたときは更正の請求という手続きで直します。気づいた時点で早めに対応しましょう。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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