2026年分(令和8年分)から、だれでも引ける「基礎控除」が最大104万円に引き上げられました。ネイリストの手取りにも直接ひびく改正です。
「税金の話はむずかしくて、いつも後まわし」。そう感じているネイリストの方は多いと思います。
ただ今回の改正は、むずかしい理屈を知らなくても損得がはっきり分かるものです。何もしなくても引ける金額が、去年より大きくなりました。
この記事では、2026年分の基礎控除がいくらになったのか、ネイリストの売上でいうとどれくらい税金が変わるのかを、順番に見ていきます。
基礎控除とは「だれでも引ける金額」のこと
基礎控除は、収入のある人なら原則だれでも引ける控除です。申請も書類も要りません。
税金は「もうけ」にそのままかかるわけではありません。もうけから基礎控除などを引いた残りに、税率をかけて計算します。
つまり基礎控除が大きくなるほど、税金のかかる部分が小さくなります。同じ売上でも、払う所得税は少なくなるということです。
2026年分の基礎控除額
令和8年度の税制改正で、基礎控除の金額が変わりました。国税庁が公表している2026年分(令和8年分)の金額は次のとおりです。
| 合計所得金額 | 2026年分(令和8年分) | 2025年分(令和7年分) |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 104万円 | 95万円 |
| 132万円超 336万円以下 | 104万円 | 88万円 |
| 336万円超 489万円以下 | 104万円 | 68万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 67万円 | 63万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 62万円 | 58万円 |
表のとおり、多くのネイリストが当てはまる範囲では104万円になりました。2025年分と比べると、16万円から36万円ほど大きくなった計算です。
なおこの104万円のうち、上乗せ部分は2026年分と2027年分の2年間だけの取り扱いとされています。2028年分(令和10年分)からは金額が変わる予定です。
いつの申告から関係するのか
この改正が施行されるのは2026年12月1日です。そして2026年分以後の所得税について適用されます。
ネイリストの多くは個人事業主なので、影響が出るのは2027年2月16日から3月15日までに行う確定申告です。今まさに動いている2026年の売上と経費が、その対象になります。
逆にいうと、2026年の春に済ませた2025年分の申告には関係ありません。そちらは表の右側、95万円や88万円といった金額で計算されています。
ネイリストの数字で見ると、いくら変わる?
表にある「合計所得金額」という言葉が、いちばんのつまずきどころです。売上のことではありません。
「合計所得金額」はもうけのこと
ホームサロンやシェアサロンで働くネイリストの場合、基本の流れはこうなります。
- お客様からいただいた施術代の合計が「売上」
- ジェル・ポリッシュ代、ネイルマシンやUVライト、筆やニッパー、シェアサロンの席代などが「経費」
- 売上から経費を引いた残りが「事業所得」
- 青色申告をしている人は、そこから青色申告特別控除も引く
こうして出たもうけが、表でいう合計所得金額にあたります。ほかに収入がなければ、この金額で自分の行を探せば大丈夫です。
どこまでが経費になるのかを一度整理しておくと、この計算がぐっと楽になります。詳しくはネイリストの経費一覧もあわせてご覧ください。
売上400万円のホームサロンの場合
たとえば、こんなネイリストを考えてみます。
- 年間の売上が400万円
- ジェルやパーツの材料費、家賃の按分、機材代などで経費が120万円
- 青色申告特別控除65万円を使っている
この場合、400万円から120万円と65万円を引いて、もうけは215万円です。表では「132万円超336万円以下」の行に入ります。
基礎控除は、2025年分なら88万円、2026年分なら104万円。差は16万円です。
ほかの控除の条件が同じだとすると、税率5%の人で8,000円ほど、税率10%の人で16,000円ほど所得税が軽くなる計算になります。分かりやすくするため、復興特別所得税は含めていません。
金額としては大きくないと感じるかもしれません。ただ、何も申請せずに自動で効くという点では、確実な差です。
住民税は別のルールです
ここで注意したいのが住民税です。今回引き上げられたのは、所得税の基礎控除です。
住民税の基礎控除は所得税とは別に定められています。所得税が減ったからといって、住民税も同じだけ減るとは限りません。
また国民健康保険料は、住んでいる市区町村ごとに計算方法が違います。こちらも所得税とは別の話として考えてください。
扶養の線引きも58万円から62万円へ
今回の改正では、扶養に関する金額も一緒に変わりました。ここはご家族の税金にも関わる部分です。
扶養に入れる所得のラインが上がりました
国税庁の資料では、扶養親族や同一生計配偶者の所得要件が、58万円以下から62万円以下に引き上げられたと示されています。収入が給与だけの場合でいうと、123万円以下から136万円以下への変更です。
これは、たとえば次のようなケースに効いてきます。
- ご家族の扶養に入りながら、自宅サロンを小さく開いている
- お子さんの用事に合わせて、出張ネイルを月に数件だけ受けている
- 本業のかたわら、副業としてシェアサロンで施術している
ネイリストとして働いている方の場合、見るのは売上ではありません。売上から経費を引いたもうけが62万円以下かどうかです。
売上が80万円あっても、ジェル代や材料費で20万円使っていれば、もうけは60万円。この場合は62万円以下におさまります。
だからこそ、少額でもレシートを残しておくことに意味があります。経費の記録がないと、実際より大きいもうけで判定されてしまいます。
健康保険の扶養とは別の話
よくある勘違いが、「扶養」をひとつの制度だと思ってしまうことです。
税金の扶養と、ご家族の健康保険に入れるかどうかの扶養は、別のルールで判断されます。今回変わったのは税金のほうです。
健康保険の条件は加入している健康保険組合や協会けんぽによって異なります。心配な方は、ご家族の勤務先や保険証に書かれている窓口に確認してください。
サロンのアルバイト給与がある人へ
サロンにアルバイトとして勤めながら、別の日に業務委託で施術している方もいます。掛け持ちのネイリストにも変更点があります。
国税庁の資料によれば、給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられました。給与をもらっている人が、給与から自動で引ける金額が大きくなったということです。
ただし、この改正が給与の源泉徴収事務に反映されるのは2026年12月からです。2026年11月までに引かれる源泉徴収税額に変更はない、と国税庁は案内しています。
つまり毎月のお給料の手取りがすぐ増えるわけではなく、12月の年末調整でまとめて精算される形になります。慌てて勤務先に問い合わせる必要はありません。
2026年のうちにやっておきたい5つのこと
基礎控除そのものは自動で効きます。ただ、その効果を取りこぼさないために、年内にやっておきたいことがあります。
1. 2026年分の経費のレシートを集める
ジェルやポリッシュ、ネイルチップやパーツ、筆やニッパー、消毒用品。細かいものほど抜けがちです。
ネイルマシンや集塵機を買った年は、金額によって処理の仕方が変わります。購入時の明細は必ず残しておいてください。
2. 検定やセミナーの領収書を確認する
JNECネイリスト技能検定やJNAジェルネイル技能検定の受験料、講習会の参加費なども、仕事に必要なものであれば記録しておきましょう。
オンライン受講の場合は、メールの控えや決済履歴が証拠になります。年末にまとめて探すより、今のうちに保存しておくほうが確実です。
3. 帳簿を12月まで放置しない
基礎控除の金額は、もうけがいくらかで決まります。もうけを出すには、売上と経費の記録が要ります。
指名売上やカード決済、回数券の売上など、入金のタイミングがバラバラになりやすいのがネイリストの特徴です。月ごとにこまめに記録しておくと、年明けが楽になります。
4. 青色申告の条件を満たしているか見直す
国税庁によれば、青色申告特別控除は55万円、または一定の要件を満たす場合は65万円、そのいずれにも当てはまらない場合は10万円です。
65万円を受けるには、55万円の要件に加えて、e-Taxで申告書などを期限までに送信するか、仕訳帳と総勘定元帳について電子帳簿保存を行う必要があります。
基礎控除104万円に青色申告特別控除65万円が重なれば、引ける金額はかなり大きくなります。条件を満たせそうか、年内に確認しておきたいところです。
5. 扶養に入っている人は62万円ラインを意識する
ご家族の扶養に入りながら施術をしている方は、年末までのもうけの見込みを一度出してみてください。
11月や12月に予約を詰め込むかどうかの判断材料になります。逆に、ラインに余裕があると分かれば、安心して予約を受けられます。
よくある質問
基礎控除が上がったら、確定申告はしなくてよくなりますか?
もうけが基礎控除などの合計より少なければ、所得税はかかりません。ただし申告が要るかどうかは人によって違います。青色申告特別控除や赤字の繰り越しは、期限までに申告しないと使えません。住民税の申告が別に必要になる場合もあります。「税金がゼロだから何もしない」と決めてしまう前に、一度確認しておくと安心です。
今回の確定申告(2025年分)はどちらの金額ですか?
2026年の春に行った2025年分の申告は、改正前の金額で計算されています。もうけが132万円以下なら95万円、132万円超336万円以下なら88万円といった金額です。104万円になるのは2026年分からで、申告するのは2027年になります。年をまたいで混ざりやすいので、どの年の話なのかを確かめながら進めてください。
アルバイトの給与と業務委託の報酬、両方ある場合はどうなりますか?
基礎控除は人ごとに1つなので、給与のもうけと業務委託のもうけを合計した金額で控除額が決まります。給与のほうは給与所得控除を引いた後、業務委託のほうは経費を引いた後の金額です。掛け持ちの方は両方の書類がそろわないと計算できません。サロンからもらう報酬明細や源泉徴収票は、捨てずにまとめて保管しておいてください。
まとめ
今回の改正のポイントを、もう一度整理します。
- 2026年分の基礎控除は、もうけが489万円以下なら104万円
- 適用されるのは2026年分以後の所得税。申告は2027年2月16日から3月15日まで
- 扶養に入れる所得のラインは58万円以下から62万円以下へ
- 給与所得控除の最低保障額は65万円から74万円へ
- 住民税や国民健康保険料は、所得税とは別のルールで決まる
控除が増えても、もうけの計算がいいかげんでは正しい金額になりません。今年の帳簿を整えることが、いちばんの近道です。
当サービスは、税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスです。どんな体制で対応しているかは運営者情報をご覧ください。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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