ネイリストの家内労働者特例|経費69万円の条件2026

ネイリストの必要経費の特例を確認するため、施術台で無地のノートと電卓を使って1年分の経費を計算している様子のイラスト

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サロンの業務委託で働くネイリストは、実際に使った経費が少なくても、最大69万円を必要経費にできる特例が使える場合があります。

「ジェル代もチップ代もサロンが用意してくれるから、経費がほとんどない」。業務委託で働くネイリストから、よく聞く言葉です。経費が少ないということは、そのぶん所得が大きくなり、税金も高くなります。

ただ、そういう働き方の人のために、国税庁が案内している特例があります。名前は「家内労働者等の必要経費の特例」。聞き慣れない名前ですが、条件に当てはまれば、実際の経費が少なくても決まった金額まで経費として認めてもらえる制度です。

この記事では、2026年分(令和8年分)の金額、ネイリストのどの働き方なら使えそうか、申告のときに何を書くのかを、国税庁の案内をもとに整理します。

家内労働者等の必要経費の特例とは

ふだんの確定申告では、売上から「実際に使った金額」を引いて所得を計算します。ジェルを買えばジェル代、電車に乗れば交通費、という具合です。

この特例は、そのルールの例外です。国税庁は「家内労働者等の場合には、必要経費として69万円まで(令和7年分は65万円、令和2年分から令和6年分までは55万円)認められる特例があります」と案内しています。実際に使った金額が69万円に届かなくても、69万円まで経費にしてよい、という意味です。

金額は年によって変わっています

この特例の金額は、ここ数年で2回変わっています。自分がどの年の申告をしているかで、使う金額が違う点に注意してください。

対象の年経費として認められる金額
2020年分〜2024年分(令和2年分〜令和6年分)55万円
2025年分(令和7年分)65万円
2026年分(令和8年分)以降69万円
出典:国税庁タックスアンサー No.1810

2026年分の69万円について、国税庁は「令和8年分の場合は、令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される金額です」と注記しています。2026年12月1日に効力が生じ、2026年1月から12月までの1年分、つまり2027年の春に出す確定申告から使う金額、ということです。

いま手元にあるのが2025年分の申告書なら65万円、これから1年を締める2026年分なら69万円。混ざりやすいので、申告する年を先に確認しましょう。

ネイリストの誰が使える?働き方ごとの目安

いちばん大事なのが「自分は対象か」です。国税庁は対象になる人をこう説明しています。

家内労働者等とは、家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人をいいます。

国税庁タックスアンサー No.1810

かみくだくと、ポイントは最後の「特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行う」という部分です。決まった相手に、続けて、自分の体を使ったサービスを提供している人、という意味になります。

ネイリストの働き方に当てはめると、次のような整理になります。あくまで目安で、最終的な判断は実際の契約や働き方を見てから行われます。

働き方特例の対象になりそうか
1つのサロンと業務委託契約を結び、そのサロンから報酬を受け取っている「特定の者」からの継続的な仕事にあたる可能性があります
シェアサロンを借りて、お客様から直接料金を受け取っている相手がその都度のお客様になるため、対象になりにくいと考えられます
ホームサロン(自宅サロン)でお客様から直接料金を受け取っている同じく、対象になりにくいと考えられます
出張ネイルで、お客様ごとに料金を受け取っている同じく、対象になりにくいと考えられます
複数のサロンと業務委託契約を結んで掛け持ちしている判断が分かれます。契約内容をもとに税務署か税理士に確認してください

つまり、この特例と相性がいいのは「サロンから報酬をもらう働き方」です。逆に、自分でお客様を集めて料金をいただく働き方では、使えないケースが多くなります。

ここは自己判断で押し切らないほうが安全な部分です。業務委託の契約書や報酬明細を持って、所轄の税務署か税理士に「この働き方で家内労働者等の特例は使えますか」と聞くのが確実です。あとから否認されると、税金を追加で納めることになります。

いくら変わる?ネイリストの具体例

金額で見たほうが早いので、2つの例で比べます。いずれも2026年分、ほかに収入はないものとします。

例1:経費が少ない業務委託ネイリスト

サロンと業務委託契約を結び、1年の報酬が150万円。材料はサロン持ちで、自分で払ったのは次のとおりとします。

  • 自分用のファイル・ニッパー・筆などの道具代:4万円
  • JNAジェルネイル技能検定の受験料と講習代:8万円
  • サロンまでの交通費:6万円
  • スマホ代のうち仕事で使った分:3万円

実際の経費は合計21万円です。特例を使わなければ、所得は150万円−21万円=129万円。特例を使えば、150万円−69万円=81万円になります。所得の金額が48万円下がる計算です。

例2:経費が多いネイリスト

同じ業務委託でも、ジェルやポリッシュ、ネイルチップやパーツを自分で買い、ネイルマシンや集塵機も自分でそろえている場合。材料費42万円、道具と機材で18万円、講習とセミナーで14万円なら、実際の経費は74万円です。

この場合は、実際の経費のほうが69万円より大きいので、特例を使う意味がありません。いつもどおり実際の金額で申告するほうが所得は小さくなります。

自分がどちらのタイプか分からないときは、まず1年分の領収書を集計してみてください。何が経費になるのかはネイリストの経費一覧にまとめています。集計した金額が69万円に届かないようなら、この特例を検討する価値があります。

報酬が173万円以下なら所得税がかからない

国税庁は、この特例について次のようにも案内しています。「この特例に該当する所得しかない人で、その年の総収入金額が173万円以下の場合は、総所得金額が基礎控除額の104万円以下となりますので、本人に所得税は課されません」。

173万円から69万円を引くと104万円。2026年分の基礎控除の金額と同じになるため、所得税が出ない、という計算です。業務委託の報酬だけで生活しているネイリストにとっては、ひとつの目安になります。

ただし、これは所得税の話です。住民税や国民健康保険料は別の仕組みで計算されるため、所得税がゼロでも納める金額が出ることがあります。お住まいの自治体の案内で確認してください。

使うときに気をつける3つのルール

1. 給与をもらっている年は制限がある

サロンのパート勤務と業務委託を掛け持ちしている人は、ここを必ず確認してください。国税庁は「給与の収入金額が69万円以上あるときは、この特例は受けられません」としています。

給与が69万円未満のときは、「69万円からその給与に係る給与所得控除額を差し引いた残額」と「実際にかかった経費」を比べて、高いほうが必要経費になります。給与が少しだけある年は、この計算を忘れないようにしましょう。

2. 経費にできるのは収入の金額まで

「特例の必要経費額は、事業所得や公的年金等以外の雑所得の収入金額が限度です」とも書かれています。たとえば産休や体調不良で報酬が年40万円だった年に、69万円を経費にして赤字をつくる、ということはできません。経費にできるのは40万円までです。

3. レシートは捨てない

「69万円にできるなら、もう領収書はいらない」と思われがちですが、逆です。実際の経費と69万円を比べないと、どちらが有利か分かりません。経費が69万円を超えた年は実際の金額を使うことになります。レシートはこれまでどおり保管し、金額も集計しておきましょう。

申告のときの手順チェックリスト

実際に申告書を作るときの流れです。上から順番に進めてください。

  1. 1年分の報酬の合計を出す(サロンからの報酬明細や通帳を集める)
  2. 実際にかかった経費を集計する(材料費、道具代、検定代、交通費など)
  3. 給与をもらった年は、その収入金額も確認する(69万円以上なら特例は使えません)
  4. 実際の経費と69万円を比べて、高いほうを必要経費にする
  5. 国税庁の「家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例の適用を受ける場合の必要経費の額の計算書」を使って金額を出す
  6. 青色申告決算書か収支内訳書に、特例を使ったあとの必要経費を書く
  7. 対象かどうか迷ったまま提出しない。税務署か税理士に確認する

書き方については、国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内があります。作成コーナーで青色申告決算書や収支内訳書を作る場合は「必要経費の任意科目に『家内労働者等の特例』と入力し、当該科目には、特例適用後の必要経費の額を入力してください」と示されています。

自分で決算書を作る場合は、青色申告決算書なら「青色申告特別控除前の所得金額」欄、収支内訳書なら「所得金額」欄の金額の頭に㊕と記載して提出するよう案内されています。欄の名前からも分かるとおり、この特例は青色申告特別控除を引く前の段階で使うものです。

よくある質問

青色申告特別控除と一緒に使えますか?

国税庁の案内では、特例を使ったあとの必要経費を青色申告決算書に書き、「青色申告特別控除前の所得金額」欄に㊕と記載するよう示されています。順番としては、特例で必要経費を計算してから、青色申告特別控除を差し引く流れです。ただし青色申告特別控除を受けるには、事前の申請や帳簿づけといった別の条件を満たす必要があります。

去年の申告で使い忘れました。やり直せますか?

すでに提出した申告について、税金を納めすぎていたときは、更正の請求という手続きで訂正を求められる場合があります。ただし年ごとの事情や期限があるため、まずは申告書の控えを用意して、税務署か税理士に相談してください。なお、2025年分の金額は65万円、2024年分以前は55万円です。

開業届を出していなくても使えますか?

この特例は、事業所得でも雑所得でも使える仕組みです。国税庁は「家内労働者等に事業所得および雑所得の両方の所得がある場合」の計算方法も示しています。ただし対象になるかどうかは働き方で判断されるため、開業届の有無だけで決まるものではありません。ご自身のケースは個別に確認してください。

この特例は、知っていれば使えるのに、名前が難しいせいで見落とされがちな制度です。経費が少ないまま申告している業務委託のネイリストは、一度確認してみる価値があります。わたしたちがどんなサービスを提供しているかは運営者情報をご覧ください。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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