ネイリストの住民税は「課税所得の10%+定額5,000円」がベースで、去年の売上に対して今年かかります。この1年のズレを知らないと、お金が手元にないときに納付書が届いて青ざめることになります。
「所得税は自分で計算して納めたのに、そのあと市役所からも封筒が来た」。フリーランスのネイリストさんから、毎年いちばん多く届く戸惑いの声です。
住民税は、確定申告とは別に、あとから自動で計算されて請求が来る税金です。しくみを一度知っておけば、金額の見当がつき、先にお金を取り分けておけます。この記事は、フリーランスのネイリストさん向けです。サロン業務委託・シェアサロン・ホームサロン・出張ネイルの方に向けて、住民税の金額の出し方と納め方をまとめました。
ネイリストの住民税は「所得割」と「均等割」の2つでできています
住民税は、お住まいの都道府県と市区町村に納める税金です。中身は大きく2つに分かれます。
1つめが所得割です。もうけが多いほど増える部分で、税率は所得に対して10%です。内訳は道府県民税が4%、市町村民税が6%と決まっています。
2つめが均等割です。こちらは、もうけの大きさに関係なく同じ額がかかる部分です。金額は道府県民税1,000円と市町村民税3,000円の合計4,000円です。「地域社会の会費」という考え方にもとづくものだと総務省は説明しています。
さらに2024(令和6)年度からは、森林環境税という国の税金1,000円がかかります。これは住民税の均等割と一緒に、市区町村から徴収されています。つまり実際の納付書では、定額部分は合計5,000円になります。
| 名前 | 金額 | どんな部分か |
|---|---|---|
| 所得割 | 課税所得の10% (道府県民税4%+市町村民税6%) | もうけが増えると増える |
| 均等割 | 4,000円 (道府県民税1,000円+市町村民税3,000円) | もうけに関係なく定額 |
| 森林環境税(国税) | 1,000円 | 均等割と一緒に納める |
なお、この10%や4,000円は「標準税率」と呼ばれる基準の数字です。都道府県や市町村は、自分たちの判断で独自の税率を定めることができます。お住まいの自治体によって、わずかに違う場合があると覚えておいてください。
「1月1日にどこに住んでいたか」で納め先が決まります
住民税は、その年の1月1日時点で住所がある市町村(都道府県)が課税します。1月2日に引っ越したとしても、その年の住民税は前の住所の自治体に納めます。
実家サロンから独立して別の街にお店を借りた年などは、「なぜ前に住んでいた市から納付書が来るの?」と驚きがちなポイントです。手続きのミスではありませんので、そのまま納めてください。
ネイリストの住民税はいくら?課税所得別の目安

金額を出す順番は、次の3ステップです。
- 売上から経費を引いて「もうけ(所得)」を出す
- もうけから所得控除を引いて「課税所得」を出す
- 課税所得に10%をかけ、そこに5,000円を足す
ジェルやポリッシュの材料費、ネイルマシン、シェアサロンの席代、サロンまでの交通費などは、1つめのステップで引く経費です。ここを取りこぼすと課税所得がふくらみ、住民税も所得税も高くなります。何が経費になるかはネイリストの経費一覧にまとめていますので、あわせて確認してみてください。
課税所得ごとのおおよその住民税は、次のとおりです。
| 課税所得 | 所得割(10%) | 均等割+森林環境税 | 合計の目安 |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 50,000円 | 5,000円 | 約55,000円 |
| 100万円 | 100,000円 | 5,000円 | 約105,000円 |
| 150万円 | 150,000円 | 5,000円 | 約155,000円 |
| 200万円 | 200,000円 | 5,000円 | 約205,000円 |
| 300万円 | 300,000円 | 5,000円 | 約305,000円 |
ここでいう課税所得は、売上そのものではありません。経費と所得控除を引いたあとの金額です。実際の納付額は、調整控除という税額の調整や自治体ごとの税率によって少しずれます。あくまで「だいたいこのくらい」の目安として使ってください。
ホームサロンのネイリストさんの計算例
自宅サロンで働くネイリストさんを例に、順番に追ってみます。数字は説明のための仮のものです。
- 1年間の売上:480万円
- 材料費・家賃の按分・水道光熱費などの経費:180万円
- もうけ(所得):300万円
- 青色申告特別控除:65万円 → 235万円
- 国民年金と国民健康保険の保険料(仮に):45万円
- 住民税の基礎控除:43万円
- 課税所得:235万円 − 45万円 − 43万円 = 147万円
所得割は147万円の10%で147,000円。これに均等割と森林環境税の5,000円を足して、住民税は年間およそ152,000円になります。月あたりに直すと約12,700円です。
住民税の基礎控除は43万円。所得税とは金額が違います
ここが多くの方のつまずきポイントです。誰でも引ける基礎控除の金額が、所得税と住民税で違います。
所得税の基礎控除は、令和7年分・令和8年分では合計所得金額に応じて決まります。国税庁によると、合計所得金額132万円以下なら95万円です。132万円超336万円以下なら88万円、336万円超489万円以下なら68万円などとなっています。
いっぽう住民税の基礎控除は、最高43万円です。住民税は「地域社会の会費」という性格が強いため、所得税より控除額が小さいものが多くなっています。
この差があるため、所得税がゼロでも住民税はかかるという状態が起こります。「確定申告したら所得税は0円だった。だから何も払わなくていい」と思い込んでいると、あとで納付書を見て驚くことになります。
ネイリストがつまずく「1年遅れ」の落とし穴
住民税は、前年の1月1日から12月31日までの所得で計算されます。つまり、今年払っている住民税は「去年のあなたの働き」に対するものです。この1年のズレが、ネイリストさんの家計を直撃します。
ケース1:業務委託サロンから独立した2年目
業務委託で指名も多く、報酬がしっかりあった年の翌年に独立したとします。独立直後は集客に時間がかかり、売上が落ち込むことも珍しくありません。
ところが住民税は、前年の高かった報酬をもとに計算されます。いちばんお金がない時期に、いちばん高い住民税の納付書が届く。これが独立2年目のよくある落とし穴です。
ケース2:産休・育休やケガで施術ができなくなったとき
ネイリストの仕事は、手が使えないと売上が立ちません。腱鞘炎やケガ、出産で長く休むと、その年の収入は大きく減ります。
それでも、前年に稼いだぶんの住民税は届きます。休む可能性が見えているなら、その前の年のうちから取り分けておくと安心です。
ケース3:住民税は経費になりません
もうひとつ大事なのが、住民税の扱いです。国税庁は「所得税や住民税は必要経費になりません」とはっきり示しています。ジェル代のように帳簿で経費に落とすことはできません。
いっぽうで、個人事業税は全額が必要経費になります。固定資産税は、業務用の部分に限って経費になります。同じ「税金」でも扱いが分かれるので、混同しないようにしてください。
経費にならないということは、手元のお金からそのまま出ていくということです。だからこそ、事前に取り分けておく発想が効いてきます。
いつ・どうやって納める?納税通知書が届いてからの流れ

住民税の納め方には、普通徴収と特別徴収の2つがあります。
普通徴収は、市町村が計算した税額を納税通知書に書いて本人に送り、本人がそれに従って納める方法です。フリーランスのネイリストさんは、基本的にこちらになります。
特別徴収は、会社などが給与から天引きして本人の代わりに納める方法です。サロンに社員やパートとして勤めている方は、こちらで納めていることになります。
通知書は6月ごろ。多くの自治体で年4回に分かれます
普通徴収の場合、納税通知書はおおむね6月ごろに届きます。多くの市区町村では、6月・8月・10月・翌年1月の年4回に分けて納める形になっています。
ただし、納期や納期限は自治体の条例で決まります。一括で納める方法を選べる自治体もあります。実際の期限は、届いた納税通知書を必ず自分の目で確認してください。
納付書が届いたら、その日のうちにスマホのカレンダーへ4回分の期限を入れてしまうのがおすすめです。予約管理アプリに顧客の来店予定を入れるのと同じ感覚で、自分のお金の予定も入れておきましょう。
確定申告をすれば、住民税の申告は要りません
国税庁は、所得税等の確定申告書を提出した方について、次のように案内しています。その申告書は地方公共団体へデータで送信されるため、あらためて住民税や事業税の申告書を出す必要はありません。確定申告をしていれば、住民税のために別の書類を書く必要はないということです。
気をつけたいのは逆のケースです。所得税の確定申告をする義務がない方は、原則として市区町村へ住民税の申告書を提出する必要があります。
「売上が少ないから確定申告はしなくていい」と言われたネイリストさんもいます。その場合は、住民税の申告が別に必要ないかを、お住まいの市区町村に確認してください。ここを放置すると、国民健康保険料の計算や、保育園の手続きに必要な課税証明書が出せないといった困りごとにつながります。
サロン勤務と掛け持ちの副業ネイリストは「自分で納付」を選べます
昼はサロンに勤めて給与をもらい、休みの日にホームサロンや出張ネイルをしている方もいます。この場合、確定申告書の第二表にある「住民税・事業税に関する事項」の欄で、給与以外の所得にかかる住民税の納め方を選べます。
給与から天引きしてほしい場合は「特別徴収」、勤務先とは別に自分で納めたい場合は「自分で納付」を選びます。記入欄を空欄のままにしないよう気をつけてください。
今日からできる、住民税の備えチェックリスト
住民税は、金額が決まってから慌てても手遅れです。次の5つを順番にやっておけば、来年の納付書は怖くなくなります。
- 今年の売上と経費を、月ごとに記録する。ジェル代もサロン席代も、レシートを捨てずに残しておきます。
- ざっくりの課税所得を出し、その10%に5,000円を足してみる。これが来年払う住民税のおおよその額です。
- その金額の12分の1を、毎月別口座に移す。納税用の口座を1つ作り、生活費と分けておきます。
- 6月に通知書が届いたら、4回分の期限をカレンダーに入れる。金額が想定と大きく違わないかも確認します。
- 払えそうにないときは、期限が来る前に市区町村の窓口へ相談する。事情によっては分割などの相談ができる場合があります。放置がいちばん損です。
特に効くのは3つめです。ネイリストの仕事は、繁忙期と閑散期の差が大きい仕事です。指名がよく入った月に少し多めに移しておくと、閑散期の納期も乗り切れます。
「そもそも自分の課税所得がわからない」という段階でも大丈夫です。当サービスは税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスですので、レシートを送るだけで数字の整理からお手伝いできます。
よくある質問
確定申告をしたら、住民税の手続きも別に必要ですか?
必要ありません。国税庁は、所得税等の確定申告書を提出した方について次のように案内しています。その申告書は地方公共団体へデータで送信されるため、あらためて住民税や事業税の申告書を提出する必要はありません。住民税や事業税の額は、申告書に書かれた所得などをもとに、都道府県や市区町村が計算します。そのうえで、それぞれから通知が届きます。ただし、確定申告をする義務がない方は、原則として市区町村へ住民税の申告書を出す必要があります。
住民税は経費として落とせますか?
落とせません。国税庁は、所得税や住民税は必要経費にならないとしています。いっぽうで、個人事業税は全額が必要経費になり、固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になります。同じ税金でも扱いが分かれるため、帳簿につけるときは注意してください。なお、ネイルサロンが個人事業税の対象になるかどうかは、都道府県の判断によります。気になる場合は、お住まいの都道府県税事務所に確認してください。
開業したばかりの1年目は、住民税はかかりませんか?
「開業したから0円」ということではありません。住民税は前年の所得で計算されるため、前の年にサロン勤務の給与や業務委託の報酬があれば、その分の住民税が今年かかります。逆に、開業1年目の売上が伸びた場合は、その税額が翌年に届きます。1年ズレて追いかけてくる税金だと考え、開業初年度から取り分けを始めておくと安心です。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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