ひとりでお子さんを育てながら働くネイリストは、所得税で35万円、住民税で30万円を差し引ける「ひとり親控除」を使える可能性があります。2026年分からは子どもの所得の上限が62万円に上がりました。
サロンの業務委託やシェアサロン、自宅サロンで働いていると、税金のことは全部自分で調べるしかありません。会社員のように誰かが年末調整でやってくれるわけではないからです。
その結果、使えるはずの控除を知らないまま申告してしまう方が少なくありません。ひとり親控除は、その代表格です。
この記事では、ひとり親控除の中身と2026年分の改正点、そしてネイリストのケースでの当てはめ方を順番に説明します。
ひとり親控除とは|ネイリストも使える35万円の控除
ひとり親控除は、ひとりで子どもを育てている人の税金を軽くする制度です。国税庁のタックスアンサーでは、控除額は35万円と決められています。
この35万円は「所得控除」です。売上から直接引く金額ではありません。売上から材料費などの経費を引き、さらにそこから引く金額だと考えてください。
住民税にも同じ名前の控除があります。総務省の資料によると、住民税のひとり親控除は30万円です。所得税と住民税で金額が違う点に注意してください。
男性のネイリストも、未婚のまま出産した方も対象
かつては「寡婦(かふ)控除」という制度があり、結婚したことがない人は対象外でした。
総務省の資料によれば、令和2年度の改正で考え方が変わりました。婚姻歴の有無や性別にかかわらず、同じ「ひとり親控除」が適用されます。
離婚した方も、死別した方も、結婚しないまま出産した方も、男性のネイリストも、要件を満たせば同じ35万円です。
実際にいくら税金が減るのか
仮に、所得税の税率が一番低い5%の区分に当てはまるネイリストで考えてみます。国税庁の速算表では、課税される所得金額が1,000円から194万9,000円までの区分の税率は5%です。
| 税の種類 | 控除額 | 税率 | 減る金額の目安 |
|---|---|---|---|
| 所得税 | 35万円 | 5% | 17,500円 |
| 住民税(所得割) | 30万円 | 10% | 30,000円 |
| 合計 | - | - | 47,500円 |
目安として、年間で4万円台の差になります。ジェルやポリッシュをまとめて仕入れられるくらいの金額です。
所得が多く税率が高い方なら、差はもっと大きくなります。
2026年分から改正|子どもの所得の上限が62万円に
ひとり親に当てはまるかどうかは、その年の12月31日の状況で判定します。国税庁は、婚姻をしていないことなどに加えて、次の3つをすべて満たす人としています。
- 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
- 生計を一にする子がいること(その子の総所得金額等が一定額以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこと)
- 自分の合計所得金額が500万円以下であること
このうち2つ目の「一定額」が、2026年分から変わります。
| 年分 | 子の総所得金額等の上限 |
|---|---|
| 2020年分〜2024年分(令和2〜6年分) | 48万円以下 |
| 2025年分(令和7年分) | 58万円以下 |
| 2026年分(令和8年分)から | 62万円以下 |
子どものアルバイト代なら136万円まで
高校生や大学生のお子さんがアルバイトをしている場合、気になるのは「いくらまで稼いでも大丈夫か」という点でしょう。
アルバイト代は給与です。給与は、もらった金額から「給与所得控除」を引いた残りが所得になります。
国税庁の表では、2026年分・2027年分(令和8年分・令和9年分)は、給与の収入金額が220万円までなら給与所得控除は74万円です。
つまり、アルバイト代が136万円なら、136万円-74万円=62万円。ちょうど上限におさまります。
アルバイト以外の収入がなければ、2026年は年間136万円までが目安になります。
住民票の書き方で対象外になることがある
見落とされがちな落とし穴があります。
総務省の資料では、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある人は、ひとり親控除も寡婦控除も対象外とされています。
パートナーと同居していて住民票をそう届け出ている場合は、控除を受けられません。心当たりがあれば、住民票を取って続柄の欄を確認してください。
ネイリストの「合計所得金額500万円以下」の数え方
3つ目の要件にある「合計所得金額500万円以下」は、売上のことではありません。ここを勘違いすると、使えるのにあきらめてしまいます。
業務委託やシェアサロン、自宅サロンで働くネイリストの場合、基本の計算はこうなります。
- 1年間の報酬や売上の合計
- そこから必要経費を引く
- 青色申告をしていれば、さらに青色申告特別控除を引く
- 残った金額が事業所得=合計所得金額(他に収入がなければ)
必要経費には、ジェルやポリッシュの材料費、ネイルマシンやUVライト、筆やニッパー、シェアサロンの席代、お客様のところへ向かう交通費などが入ります。どこまで経費にできるかはネイリストの経費一覧にまとめています。
計算の例
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 1年間の報酬(業務委託サロン+出張ネイル) | 5,800,000円 |
| 必要経費(材料費・機材・交通費・通信費など) | 1,350,000円 |
| 差引(青色申告特別控除前) | 4,450,000円 |
| 青色申告特別控除 | 650,000円 |
| 合計所得金額 | 3,800,000円 |
この例では売上が580万円ありますが、合計所得金額は380万円です。500万円以下なので、要件を満たします。
「売上が500万円を超えたから無理」と思い込まないでください。判定するのは経費を引いたあとの金額です。
青色申告特別控除も効いてくる
青色申告特別控除は、国税庁によると65万円・55万円・10万円の3種類です。
- 55万円:複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添えて期限内に提出した場合
- 65万円:55万円の要件に加えて、e-Taxで申告するか、仕訳帳と総勘定元帳を電子帳簿保存している場合
- 10万円:上記の要件を満たさない青色申告者
合計所得金額が500万円を少し超えそうなネイリストにとっては、この控除が分かれ目になることもあります。
チェックリストと申告の手順
まずは、今年の12月31日時点で次の項目に当てはまるか確認してください。
- 結婚していない、または配偶者の生死が明らかでない
- 事実上の婚姻関係にあたる人がいない(住民票の続柄に「未届」の記載がない)
- 生計を一にする子がいる
- その子の総所得金額等が62万円以下(2026年分の場合)
- その子が、元配偶者など他の人の扶養親族や同一生計配偶者になっていない
- 自分の合計所得金額が500万円以下
すべてに当てはまれば、ひとり親控除の対象です。
申告での書き方
業務委託やシェアサロンのネイリストは、年末調整がありません。自分で確定申告をして、ひとり親控除の欄に記入します。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使う場合は、所得控除の入力画面に寡婦控除・ひとり親控除の項目があります。画面の案内に沿って答えていけば、控除額が計算されます。
判定に使うのは12月31日時点の状況です。住民票の続柄や、子どもの1年間の収入金額を手元で確認してから入力を始めると、迷わずに済みます。
過去に申告し忘れていた場合
「去年も一昨年も、ひとり親だったのに書いていなかった」というケースもあります。
国税庁によると、還付を受けるための申告書は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。さかのぼって手続きできる可能性があるということです。
心当たりのある方は、過去の申告書の控えを見返してみてください。
寡婦控除との違い
| ひとり親控除 | 寡婦控除 | |
|---|---|---|
| 所得税の控除額 | 35万円 | 27万円 |
| 住民税の控除額 | 30万円 | 26万円 |
| 子の有無 | 生計を一にする子が必要 | 離婚の場合は扶養親族が必要(死別の場合は不要) |
| 性別・婚姻歴 | 問わない | 女性で、夫と離婚または死別した人 |
| 合計所得金額 | 500万円以下 | 500万円以下 |
両方に当てはまることはありません。まずひとり親かどうかを見て、該当しなければ寡婦控除を確認する流れになります。
よくある質問
子どもが小学生でもひとり親控除は使えますか?
使えます。国税庁の質疑応答では、扶養控除の対象にならない16歳未満の子どもについても、ひとり親控除の要件である「生計を一にする子」の年齢に制限はないとされています。小学生でも保育園児でも、他の要件を満たせば対象です。
娘を青色事業専従者にしてサロンを手伝ってもらっています。対象外になりますか?
専従者給与を払っていても、対象になる場合があります。国税庁の質疑応答では、専従者給与96万円で他に収入のない娘を青色事業専従者としているケースについて、3つの要件をすべて満たすためひとり親に該当すると示されています。ご自身のケースについては個別に確認してください。
元夫が子どもを扶養に入れていると、私は使えませんか?
その子を基準にひとり親控除を受けることはできません。要件では、子が「他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない」ことが求められているためです。養育費のやりとりがある場合は、どちらが扶養に入れるかを事前に話し合っておくと混乱を避けられます。
まとめ
- ひとり親控除は所得税で35万円、住民税で30万円
- 判定は12月31日の状況。年内に住民票の続柄を確認しておく
- 子の所得の上限は2026年分から62万円(アルバイト代だけなら136万円が目安)
- 自分の合計所得金額500万円以下は、売上ではなく経費を引いたあとの金額で判定する
- 申告し忘れていた年がある場合、還付のための申告書は翌年1月1日から5年間提出できる
当サービスは、税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスです。くわしくは運営者情報をご覧ください。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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