ネイリストの検定代は経費になる?2026年の判断基準

ネイリストの検定代・スクール代が経費になるかを考える、ネイル用品とレシート・電卓が並んだデスクのイラスト

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検定やスクールの受講料が経費になるかどうかは、「いまの仕事に直接必要か」と「金額が常識の範囲か」の2つで決まります。

「ジェルネイル技能検定を受けるために講習に通いました。この費用、経費に入れていいのでしょうか」

ネイリストの方から、とてもよくいただく質問です。ジェルやファイルのように「毎日使う消耗品」と違って、検定やスクールの費用は数万円から数十万円と大きくなりがちです。だからこそ、入れていいのか迷いますよね。

結論から言うと、経費にできる場合はあります。ただし条件があり、その条件は国税庁のルールにはっきり書かれています。この記事では、その条件を日常の言葉に置き換えて、ネイリストの具体例で整理します。

検定代・スクール代は「研修費」として経費にできます

まず、経費(必要経費)の大原則を確認します。

国税庁は、必要経費に算入できる金額を「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額」と「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」と説明しています。ひとことで言えば、売上をつくるために使ったお金です。

そのうえで、技能や知識を身につけるための費用には、専用のルールが用意されています。所得税基本通達37-24です。少し硬い文章ですが、大事なところなのでそのまま引用します。

業務を営む者又はその使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているものを含む。)が当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額は、当該習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り、必要経費に算入する。

読み解くと、ものさしは2つだけです

長い一文ですが、条件は2つしかありません。

  • ものさし1:いまの仕事の遂行に「直接必要」な技能や知識であること
  • ものさし2:その習得や研修のために「通常必要とされる」金額であること

ネイリストに置き換えます。ものさし1は「その技術を身につけたことで、お客様に提供できる施術やメニューが増えるか」と考えるとイメージしやすくなります。ものさし2は「同じような講座と比べて、常識はずれに高額ではないか」ということです。

逆に言えば、この2つを説明できない支払いは、経費として弱くなります。とくに気をつけたいのが、趣味や自分磨きの要素が混ざっている講座です。

ネイリストのケース別に見てみます

ネイリストの検定費用を経費にできるものと判断が分かれるものに仕分けするイメージのイラスト

2つのものさしを、実際の支払いに当てはめてみます。ここでは、すでにネイルの仕事で売上がある方(業務委託・シェアサロン・ホームサロン・出張ネイルのいずれも)を前提にします。

支払いの例考え方
ジェルネイル技能検定・ネイリスト技能検定の受験料いまの施術に直結する技能の証明。ものさし1を説明しやすい
検定対策の講習・スクールの受講料同上。受講内容が施術に関わるものかどうかで判断する
フィルイン、パラジェル、エアブラシなどの技術セミナー提供メニューが増える・品質が上がるなら説明しやすい
衛生管理やサロンワークの講習営業に必要な知識として説明しやすい
集客やSNS運用のセミナーサロンの集客のためであれば業務上の費用として整理できる
まつげエクステなど、いま提供していない分野の講座これから提供するのか、趣味なのかで結論が変わる
教養・語学・自分磨きの講座施術との結びつきを説明できないと、経費にするのは難しい

表の下2行のように、白黒がはっきりしないものもあります。ポイントは「これから始めるメニューのために受けた」と説明できるかどうかです。受講後に実際にメニュー化して、そのメニューの売上が帳簿に残っていれば、説明はぐっと通りやすくなります。

仕事と私用が混ざるときは「分けられる分だけ」

仕事にも私生活にも関わる支払いを、家事関連費と呼びます。国税庁は、家事関連費のうち必要経費に算入できるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」としています。

判定の目安も通達に書かれています。所得税基本通達45-2では、業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかで判定するとしたうえで、50%以下であっても「その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない」とされています。

たとえば、2日間の講座のうち1日が施術技術、もう1日が趣味的な内容というような場合です。受講案内やカリキュラムを残しておけば、区分の根拠になります。

なお、講習に行くための交通費や、講習で使うために買った材料・道具は、受講料とは別に整理します。何がどの科目になるかはネイリストの経費一覧にまとめていますので、あわせてご確認ください。

開業前に払ったスクール代はどうなりますか

ここが一番の分かれ道です。通達37-24は「業務を営む者」が対象です。つまり、すでに事業をしている人が前提になっています。

では、ネイルの仕事を始める前に通ったスクール代はどうなるのでしょうか。この場合に検討するのが「開業費」です。

開業費は、支払った年に全額を経費にするのではなく、繰延資産として扱われます。国税庁は、繰延資産(開業費)の償却費の計算について「60か月の均等償却又は任意償却のいずれかの方法によることとされています」と説明しています。

この「任意償却」がネイリストにとっては使いやすい仕組みです。国税庁は次のように説明しています。

  • 任意償却は繰延資産の額の範囲内の金額を償却費として認めるもので、下限が設けられていないため、支出の年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよい
  • 繰延資産の未償却残高は、いつでも償却費として必要経費に算入することができる
  • ただし、支出した開業費の内容と、その額が過年分において必要経費に算入されていないことを明らかにしておく必要がある

開業1年目は売上がまだ小さく、経費を入れても税金が出ないことがあります。そういう年に無理に全額を使い切らず、売上が伸びた年に回すという考え方ができるわけです。

ただし、開業前のどの支払いを開業費に含められるかは、その方の準備の実態によって変わります。金額が大きくなりやすいところなので、自己判断で決めてしまう前に一度ご相談ください。

サロンに雇われて働いている場合は考え方が変わります

サロンに雇われているネイリストの給与と検定費用の特定支出控除を表すスマートフォンと封筒のイラスト

ここまでは、業務委託やホームサロンなど「自分で事業をしている」場合の話でした。サロンから給与をもらって働いている方は、そもそも経費という考え方を使いません。代わりに、次の2つを確認してください。

1. サロンが負担してくれる場合

国税庁は、役員や使用人に仕事に関係のある技術や知識を習得させるための費用について、「役員または使用人としての職務に直接必要な技術や知識を習得させ、または免許や資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用または大学等の聴講費用に充てるための費用として適正なものに限り、給与として課税しなくてもよいことになっています」と案内しています。

つまり、サロンが検定の講習費を出してくれても、それが給与扱いになって所得税が増える、ということにはならないのが原則です。まずはサロンに相談してみる価値があります。

2. 自分で払った場合の「特定支出控除」

給与をもらっている方が自分で払った場合には、給与所得者の特定支出控除という制度があります。国税庁が挙げる特定支出には、次のものが含まれます。

  • 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
  • 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)

使えるのは、その年の特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額を超えるときで、超える部分の金額を差し引ける仕組みです。ハードルは高めですが、スクールに通った年など金額が大きい年は確認する価値があります。

手続きには注意点があります。特定支出控除を受けるには確定申告が必要で、特定支出に関する明細書に加えて、給与の支払者またはキャリアコンサルタントによる証明書を添付する必要があります。また、雇用保険法による教育訓練給付金が支給される部分は、特定支出には含まれません。

なお、厚生労働省の教育訓練給付制度では、一定の受給要件を満たす方が厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受講・修了した場合に、その費用の一部が支給されます。指定講座かどうかは講座ごとに決まっていますので、受講を決める前にハローワークで確認してみてください。

迷わないための記録の残し方チェックリスト

検定やスクールの費用でいちばん多いつまずきは、「経費にできるかどうか」ではなく「あとから説明できる材料が残っていない」ことです。受講を決めた時点で、次の4つをそろえてください。

  1. 領収書と受講案内をセットで残す。金額だけでなく、何を学ぶ講座なのかがわかる資料が根拠になります
  2. 受講の目的をひとことメモする。「フィルインを導入して単価を上げるため」など、1行で構いません
  3. 受講後の変化を残す。新メニューの写真や、メニュー表の更新、その売上が帳簿にあることが何よりの説明になります
  4. 科目名をそろえる。「研修費」でも「諸会費」でもかまいませんが、一度決めたら毎年同じ科目で通します

領収書などの書類は、青色申告か白色申告かによって5年または7年の保存が必要です。年ごとのファイルにまとめておくと、あとから探す手間がなくなります。

受講料をクレジットカードの分割払いにした場合も、経費にする金額は原則として支払うべきことが確定した受講料の総額で考えます。毎月の引き落とし額だけを見ていると、金額がずれてしまうので気をつけてください。

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よくある質問

検定に落ちてしまいました。受験料や講習費は経費にできませんか。

所得税基本通達37-24は、業務の遂行に直接必要な技能や知識の「習得又は研修等を受けるために要する費用」を対象としています。合格したことが条件とは書かれていません。受験や受講のために実際に支払っているのであれば、合否そのもので取り扱いが変わるものではないと考えられます。領収書と受講案内を残しておいてください。

ネイルスクールに通った当時はまだ会社員でした。開業してから経費にできますか。

開業前の支払いは、その年の経費ではなく「開業費」として検討することになります。国税庁は、繰延資産(開業費)の償却は60か月の均等償却か任意償却のいずれかによるとし、任意償却なら未償却残高をいつでも必要経費に算入できると説明しています。ただし、どの支払いを開業費に含められるかは準備の実態によって変わりますので、金額が大きい場合は個別にご相談ください。

スクール代が高額です。10万円を超えると資産として何年かに分ける必要がありますか。

金額で年数に分けるルールは、ネイルマシンやUVライトのような「物」を買ったときの話です。受講料そのものは物の購入ではないため、その考え方は当てはまりません。ただし開業前の支払いは前の質問のとおり開業費の検討が必要ですし、受講とあわせて高額な機材を買った場合は、機材のほうを分けて考えます。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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