ネイリストの機材は経費に?10万円と40万円の壁2026

ジェルライトやネイルマシン、集塵機と電卓、レシートが並ぶネイリストの机。機材の経費処理をイメージした挿絵

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ネイルマシンやジェルライトを買ったとき、その年に全額を経費にできるかどうかは「いくらだったか」で決まります。

ネイル機材は「買った年に全額経費」とは限りません

ジェルやポリッシュ、ファイル、コットンのような使い切る材料は、買った年の経費になります。迷うことはほとんどありません。

困るのは、ネイルマシンやジェルライト、集塵機、ネイルデスクのような「何年も使うもの」です。

国税庁は、何年も使う道具について次のように説明しています。買った金額を一度に経費にするのではなく、使える期間に分けて少しずつ経費にしていく、という考え方です。これを減価償却といいます。

ただし、金額が小さいものまで何年も分けて計算するのは大変です。そこで、一定の金額より安いものは買った年にまとめて経費にしてよい、というルールが用意されています。

つまり、ネイリストが機材を買ったときにまず見るべきなのは「金額」なのです。

ここを間違えると、その年の経費が実際より多くなったり少なくなったりします。経費が変われば所得が変わり、所得税だけでなく住民税や国民健康保険料にも響きます。

逆に言えば、ルールを知っているだけで、買うタイミングや申告のしかたを自分で選べるようになります。

金額で分かれる4つのルート(10万円・20万円・40万円)

ネイル機材を2つの箱に仕分けるイラスト。10万円未満と10万円以上で経費の扱いが分かれることを表した図

国税庁の説明をネイリスト向けに整理すると、次の表のようになります。

買ったときの金額だれでも使える方法青色申告の人なら
10万円未満買った年に全額を経費にする同じ
10万円以上20万円未満3年に分けて、毎年3分の1ずつ経費にする買った年に全額も選べる
20万円以上40万円未満使える年数に分けて少しずつ経費にする買った年に全額も選べる
40万円以上使える年数に分けて少しずつ経費にする同じ

表の右の列にある「買った年に全額」は、青色申告をしている人だけが使える特例です。国税庁の説明でも、対象は青色申告者に限られています。

ネイリストの機材にあてはめてみます

よくある3つのケースで見てみましょう。金額はすべて、送料などを含めた支払総額とします。

  • ジェルライトを支払総額3万円で買った……10万円未満なので、青色でも白色でも買った年に全額が経費になります。消耗品費などの科目で処理します。
  • 集塵機とネイルマシンをそれぞれ買い、どちらも支払総額15万円だった……10万円以上20万円未満です。白色なら3年に分けて毎年5万円ずつ。青色なら買った年に15万円を全額経費にすることも選べます。
  • ネイルデスクとチェア一式を支払総額35万円で買った……白色なら使える年数に分けて計算します。青色で2026年4月1日以後に買ったものなら、買った年に35万円を全額経費にできます。

同じ金額でも、青色申告かどうかで結果が大きく変わることがわかります。

2026年4月に金額のラインが変わりました

この特例の上限は、長いあいだ30万円未満でした。それが令和8年度の税制改正で40万円未満に引き上げられています。

中小企業庁の案内では、40万円未満の資産を買った場合に合計300万円までを限度として、買った年に全額を経費にできると説明されています。適用期限は令和11年(2029年)3月31日までです。

注意したいのは、境目が「買った日」だという点です。2026年4月1日より前に買ったものは、これまでどおり30万円未満までが対象になります。

たとえば同じ年の中でも、3月に買った35万円のネイルデスクセットと、5月に買った35万円のネイルデスクセットでは扱いが変わります。前者は使える年数に分けて計算し、後者は買った年に全額を経費にできます。

レシートや納品書の日付を必ず残しておいてください。

ネイリストがつまずきやすい5つのポイント

1. 金額は「本体だけ」では判定しません

国税庁は、買った道具の金額には、購入代金のほかに引取運賃や運送保険料、購入手数料などを含めると説明しています。さらに、使えるようにするためにかかった費用も含みます。

通販でネイルマシンを買ったときの送料や、サロンに集塵機を設置してもらった工事代も、金額に足して判定するということです。

本体価格が10万円をわずかに下回っていても、送料や設置費用を足すと10万円を超えることがあります。ここを見落とすと処理を間違えます。

2. 消費税を含めるかどうかは、経理のやり方で変わります

国税庁は、金額を判定するときに消費税を含めるかどうかは、その人の経理のやり方によると説明しています。

そして、消費税を納めていない免税事業者の経理は税込経理になる、とも書かれています。

売上が小さく消費税を納めていないネイリストの多くは、消費税を含めた支払総額で10万円や40万円のラインを判定することになります。表示価格だけを見て判断しないでください。

3. 白色申告だと40万円の特例は使えません

40万円未満を買った年に全額経費にできる特例は、青色申告をしている人だけのものです。

白色申告の場合、10万円以上20万円未満なら3年に分けて経費にする方法が使えます。20万円以上は、使える年数に分けて計算していくことになります。

青色申告をするには、事前に税務署へ承認申請書を出しておく必要があります。国税庁の案内では、青色申告をしようとする年の3月15日までが期限です。その年の1月16日以後に新しく事業を始めた場合は、事業を始めた日から2か月以内です。

つまり、今から申請しても今年分にはさかのぼれません。来年から青色にしたいなら、来年の3月15日までに出しておく必要があります。

4. 「使える年数」は自分で決められません

分けて経費にする場合の年数は、財務省令の表で決まっています。国税庁の確定申告書等作成コーナーが公開している器具・備品の表には「理容・美容機器」という区分があり、年数は5年とされています。

ネイル用の機器がどの区分に当たるかは、ものによって判断が分かれることがあります。たとえばサロンに置くパソコンやタブレットは、美容機器ではなく事務機器として扱うのが自然です。

迷ったときは、機材の名前と用途を伝えたうえで税務署か税理士に確認してください。自己判断で短い年数を使うと、後から指摘を受けることがあります。

5. プライベートでも使うものは、分けて考えます

自宅サロンで使っているジェルライトを、自分のネイルにも使っている。出張ネイル用に買ったスーツケースを旅行にも使っている。こうしたケースはよくあります。

国税庁は、家事と仕事の両方に関わる費用について、仕事のために直接必要だったことがはっきり区分できる部分だけが経費になる、と説明しています。

「だいたい半分」と感覚で決めるのではなく、使った回数や時間など、後から説明できる根拠を残しておいてください。ほかの費目の考え方はネイリストの経費一覧にまとめています。

機材を買ったときのチェックリスト

帳簿とカレンダー、スマホ、ネイルポリッシュが並ぶ机。機材を買ったときの記帳チェックリストをイメージした挿絵

新しい機材を買ったら、次の順番で確認すると迷いません。

  • レシートや納品書に「買った日」が入っているか確認する
  • 本体価格に送料・手数料・設置費用を足して、支払総額を出す
  • 消費税を納めていないなら、税込の支払総額でラインを判定する
  • 10万円未満なら、消耗品として買った年の経費にする
  • 10万円以上なら、青色申告かどうかで進み方を決める
  • 青色申告で40万円未満なら、買った年に全額を経費にできる(2026年4月1日以後に買ったもの)
  • 仕事以外にも使うなら、使う割合とその理由をメモに残す

青色申告で特例を使うときは、書き方に決まりがあります。中小企業庁の案内では、青色申告決算書の「減価償却費の計算」の「摘要」欄に「措法28の2」と記載することが必要とされています。会計ソフトを使っている場合も、この欄が入っているか確認してください。

なお、特例で全額経費にできるのは1年で合計300万円までです。ネイリストの機材で超えることはまれですが、開業の年にまとめて買うときは意識しておくと安心です。

もうひとつ、年の途中で買ったときの注意があります。「使える年数に分けて計算する方法」を選んだ場合、初年度に落とせるのは1年分まるごとではありません。仕事で使い始めた月から12月までの月数で計算します。

そのため、12月に買った機材をこの方法で処理すると、その年はほとんど経費になりません。年末に慌てて高い機材を買っても、思ったほど税金は下がらないということです。

なお、10万円以上20万円未満のものを3年に分けて3分の1ずつ経費にする方法では、この月数の計算はしません。買った月にかかわらず、初年度から3分の1を経費にできます。

一方、青色申告で40万円未満の特例を使えるなら、12月に買っても買った年に全額が経費になります。買う時期を考えるときの判断材料にしてください。

帳簿や書類は、原則として7年間保存することとされています。レシートは撮って終わりにせず、原本の置き場所も決めておきましょう。

よくある質問

メルカリで中古のネイルマシンを買いました。扱いは同じですか。

金額のラインの見方は同じです。送料を含めた支払総額で10万円未満かどうかを判定します。

10万円以上になる場合、中古品は新品と使える年数の考え方が変わることがあります。金額が大きいときは、購入時の状態がわかる記録を残したうえで確認してください。

分割払いやクレジットカードで買った場合、経費にできるのはいつですか。

支払いが終わった年ではありません。その機材を仕事で使い始めた年が基準になります。

10万円未満なら、使い始めた年に全額が経費になります。支払いが翌年以降に続いていても同じです。

サロンの業務委託で働いていますが、自分で買った道具も経費にできますか。

自分で費用を負担して仕事に使っている道具であれば、必要経費として扱えます。金額による分かれ方も、これまで説明したとおりです。

ただし、サロンから道具代が支給されていたり、報酬から差し引かれていたりする場合は扱いが変わります。報酬明細を確認してください。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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