ネイリストの掛け持ち|複数サロンの確定申告2026

サロンを掛け持ちするネイリストが、スマートフォンと報酬明細を見ながら確定申告の準備をしている手元のイラスト

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サロンを2つ、3つと掛け持ちしているネイリストさんも、確定申告は「1年に1回・全部まとめて」1枚です。

週の前半はA店で業務委託、後半はB店のシェアサロン、土日は出張ネイル。こんな働き方をしているネイリストさんは珍しくありません。

そこで必ず出てくるのが「申告ってサロンごとにするの?」「A店は源泉徴収されてるけどB店はされてない。どうすればいいの?」という疑問です。

この記事では、掛け持ちネイリストさんの確定申告を、税務の言葉を使わずに整理します。読み終わるころには、何を集めて何を数えればいいのかがはっきりします。

掛け持ちでも、確定申告は1年に1回だけ

まず一番大事なところからお伝えします。確定申告は「サロンごと」ではなく「人ごと」です。

A店の収入、B店の収入、出張ネイルの売上。これを全部足して、1年分の成績表を1枚つくります。掛け持ちが3件あっても、申告書が3枚になることはありません。

国税庁は、サービス業などの事業から生じる所得を「事業所得」とし、総収入金額から必要経費を差し引いて計算すると説明しています。ネイルの施術で得た報酬は、このサービス業の売上にあたります。

つまり計算の形はとてもシンプルです。

すべてのサロンの収入 − すべての経費 = もうけ(所得)

この「もうけ」から生命保険料控除や基礎控除などを引いた残りに、所得税がかかります。所得税の税率は5パーセントから45パーセントの7段階で、もうけが少ない人ほど税率も低くなります。

帳簿もサロンごとに分けなくて大丈夫

「A店用のノートとB店用のノートを分けたほうがいいですか」と聞かれることがありますが、その必要はありません。青色申告決算書や収支内訳書は1年に1枚です。

ただし、売上を記録するときは「いつ・どこから・いくら」が後から分かるようにしておいてください。A店の報酬が入金されたら「9月20日 A店 報酬 ○○円」のように書く。それだけで十分です。

ジェルやファイル、ニッパーなどの材料費も、A店で使った分とB店で使った分を分ける必要はありません。どちらも自分の仕事のために買ったものだからです。経費にできるものの具体例はネイリストの経費一覧にまとめています。

サロンごとに契約が違うと、税金の扱いも変わります

ここが掛け持ちの一番ややこしいところです。同じ「ネイルの仕事」でも、契約の形によって税金の扱いが2種類に分かれます。

契約の形お金の呼び方税金の区分経費
業務委託・シェアサロン・出張ネイル報酬事業所得(または雑所得)実際にかかった分を引ける
パート・アルバイト給与給与所得給与所得控除で自動的に引かれる

見分け方は「契約書のタイトル」ではなく「実際の働き方」で判断されますが、まずは手元の書類を見てください。

  • 毎月「支払明細」「報酬明細」が届く → 業務委託の可能性が高い
  • 毎月「給与明細」が届き、年末に源泉徴収票をもらう → 給与の可能性が高い
  • 売上の何パーセントという形で受け取っている → 業務委託の可能性が高い
  • 時給で計算され、雇用保険が引かれている → 給与の可能性が高い

業務委託と給与が混ざっている場合は、両方を1枚の申告書に書きます。給与は源泉徴収票の金額、業務委託は自分で集計した売上と経費。書く欄が違うだけで、申告そのものは1回です。

掛け持ちネイリストがつまずきやすい4つのポイント

1. サロンによって源泉徴収の有無が違う

「A店は10.21パーセント引かれているのに、B店は引かれていない。どちらかが間違っているのでは」という相談はとても多いです。

報酬から所得税を天引きする仕組みを源泉徴収といいます。国税庁が挙げている源泉徴収の対象となる代表的な報酬は、原稿料や講演料、弁護士や司法書士などの資格を持つ人への報酬、モデルや外交員への報酬、芸能関係の出演料などです。ネイルの施術報酬は、この代表例には挙げられていません。

一方で、サロンが「給与」として支払っている場合は、給与としての源泉徴収が行われます。つまり、天引きの有無はサロン側の契約と支払い方の違いから生まれます。

大切なのは、引かれていた分を申告で忘れずに反映させることです。天引きされた金額は前払いした所得税なので、申告で精算すると戻ってくることがあります。書き漏らすと、その分だけ損をします。

2. 年末調整は掛け持ち全部ではやってもらえない

パートやアルバイトとして給与をもらっている場合、勤務先が年末調整をしてくれることがあります。

ただし年末調整は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を出している勤務先で行われるものです。掛け持ちしている全部のサロンが、それぞれ年末調整をしてくれるわけではありません。

年末調整されなかった給与がある場合は、自分で確定申告をして精算します。源泉徴収票は勤務先ごとに発行されるので、全部そろえてから申告に進んでください。

3. 「20万円以下なら申告しなくていい」は給与の人の話

ネットでよく見かける「20万円ルール」は、給与をもらっている人に向けた説明です。国税庁は、給与所得者で確定申告が必要な人として、次のようなケースを挙げています。

  • 1か所から給与を受けていて、給与と退職金以外の所得の合計が20万円を超える人
  • 2か所以上から給与を受けていて、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与と退職金以外の所得との合計が20万円を超える人
  • 1年間の給与の総額が2,000万円を超える人

ここで気をつけたいのは、2つ目の条件です。掛け持ちで給与をもらっていると、「年末調整されなかった給与の収入金額」も20万円の判定に足し算されます。業務委託のもうけが少なくても、もう一方の給与が20万円を超えていれば申告が必要になる、ということです。

そしてもう一つ。この20万円は、給与をもらっていない完全フリーランスのネイリストさんには当てはまりません。業務委託と出張ネイルだけで働いている方は、この条件では判断できないので、もうけと控除の金額で判断することになります。

なお、所得税の確定申告をすれば、その内容は市区町村にも伝わります。所得税の申告をしない場合に住民税の申告が必要かどうかは、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。

4. 「家内労働者等の特例」は掛け持ちだと要確認

あまり知られていませんが、経費が少ない人にとって大きい特例があります。

国税庁の「家内労働者等の必要経費の特例」では、実際にかかった経費が少なくても、一定額まで経費として認められます。金額は次のとおりです。

対象の年分経費として認められる上限
令和2年分から令和6年分55万円
令和7年分65万円
令和8年分(2026年分)69万円

令和8年分の69万円という金額は、令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用されるものです。

ただし、誰でも使えるわけではありません。国税庁は対象者を「家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人」と説明しています。

掛け持ちの場合、この「特定の者に対して継続的に」という部分の判断が難しくなります。1つのサロンに継続して入っているのか、複数の相手と取引しているのか、不特定のお客様から直接受注しているのかで見方が変わるためです。使えるかどうかは自己判断せず、税務署か税理士に確認してください。

もう一つ注意点があります。給与の収入金額が69万円以上ある場合、この特例は受けられません。サロンのパート収入がそれなりにある掛け持ちネイリストさんは、この時点で対象外になることが多いです。

年内にやっておくこと・申告までの手順

9月は、慌ただしい年末や申告直前より、はるかに落ち着いて手を動かせる時期です。今のうちに整えておくと、あとがぐっと楽になります。

今日からできるチェックリスト

  • 掛け持ち先を紙に書き出す。サロン名、契約の形(業務委託かパートか)、入金日をメモする
  • サロンごとの明細を1か所に集める。報酬明細も給与明細も、月ごとにまとめて保管する
  • 明細に天引きの記載があるか確認する。「源泉徴収税額」「所得税」という欄があれば、その金額を控えておく
  • 通帳やアプリで、1月から今月までの入金を洗い出す。明細をなくしていても入金額は残っています
  • ジェル、ポリッシュ、筆、ニッパー、チップ、パーツなどのレシートを集める
  • サロンへの移動にかかった交通費を思い出せるうちに書き出す
  • 年末調整をしてもらえる勤務先があるか、11月ごろに確認しておく

申告までのスケジュール

確定申告の受付は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。期限が土曜日や日曜日にあたるときは、次の平日までずれます。参考までに、令和7年分の所得税の申告と納付の期限は令和8年3月16日(月)でした。

今年(令和8年)の分については、期限が近づいたら国税庁のサイトで正確な日付をご確認ください。

掛け持ちが多い方ほど、集める書類の数も増えます。年明けに一気にやろうとすると、明細が1枚足りないだけで手が止まります。月に1回、明細を袋やファイルに入れるだけでも、申告の負担はかなり減ります。

掛け持ちを増やすときに考えておきたいこと

掛け持ち先が増えると収入は安定しますが、事務作業も比例して増えます。新しいサロンに入る前に、次の3つだけ確認しておくと安心です。

  • 契約の形:業務委託なのか、パートなのか。書面でどう書かれているか
  • 明細の発行:毎月の明細が出るか。出ない場合は自分で記録する必要があります
  • 材料の負担:ジェルやパーツを自分で買うのか、サロンが用意するのか。自分負担なら経費になります

この3つをメモしておくだけで、申告のときに「これはどっちだったっけ」と悩む時間がなくなります。

よくある質問

サロンごとに確定申告書を出す必要はありますか?

ありません。確定申告は人ごとに1年に1回です。掛け持ち先がいくつあっても、すべての収入と経費を1枚にまとめて計算します。

A店は源泉徴収されていて、B店はされていません。何か手続きが必要ですか?

サロン側の支払い方の違いなので、あなたが手続きをする必要はありません。確定申告のときに、天引きされた金額を忘れずに書いてください。前払いした所得税として精算され、払いすぎていれば戻ってきます。

途中で辞めたサロンの分も申告に入れますか?

入れます。判定するのは1月1日から12月31日までに受け取った分です。春で辞めたサロンの報酬も、その年の収入に含めて計算してください。明細をなくしていても、通帳の入金記録から拾えます。

制度の考え方や、当サービスの方針については運営者情報もあわせてご覧ください。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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