会社に勤めながらネイルの仕事もしている方から、いちばん多く聞かれるのが「20万円を超えたら確定申告ですよね?」という質問です。この20万円は、お客様からもらった金額そのものではありません。ジェル代などを引いたあとの金額です。ここを勘違いすると、申告が必要なのに気づけません。
副業ネイリストに「20万円ルール」があるのはなぜ?
会社員の方は、毎年12月に勤務先が年末調整をしてくれます。そこで1年分の所得税の過不足が精算されるので、ふつうは確定申告をしなくて済みます。
ただし、これには例外があります。国税庁は「給与所得者で確定申告が必要な人」として、いくつかの条件を示しています。副業でネイルをしている方に関係するのは、主に次の3つです。
| あなたの状況 | 確定申告が必要になるライン |
|---|---|
| 勤務先が1か所だけ(年末調整あり) | 給与以外の所得の合計が20万円を超えるとき |
| 勤務先が2か所以上ある | 年末調整されなかった給与の収入金額と、給与以外の所得の合計が20万円を超えるとき |
| 給与の年収が2,000万円を超える | 副業の金額に関係なく必要 |
いちばん多いのは、いちばん上のパターンです。平日は会社、土日や夜にホームサロンや出張ネイルをしている、という働き方がこれにあたります。
なお、勤務先が2か所以上ある方には例外もあります。給与の収入金額の合計から一定の所得控除を引いた残りが150万円以下で、かつ給与以外の所得が20万円以下なら、申告はいりません。ネイルサロンでアルバイトをしながら別で副業をしている方は、ここも確認しておいてください。
20万円は「売上」ではなく「所得」。ネイリストの計算例

ここがいちばん大事なところです。20万円で見るのは、お客様から受け取った金額の合計ではありません。そこから、その仕事のために使ったお金を引いた残りです。
言い方を変えると、こうなります。
- 収入(お客様からもらった施術料の1年分の合計)
- マイナス 必要経費(ジェル、ポリッシュ、チップ、ファイル、出張の交通費など)
- イコール 所得 ← この金額を20万円と比べる
実際の数字で見てみましょう。月に2〜3人、友人の紹介で施術している方の例です。
| 項目 | 1年分の金額 |
|---|---|
| 施術料の合計(収入) | 380,000円 |
| ジェル・ポリッシュ・チップ・パーツ | -120,000円 |
| ファイル・筆・ニッパーなどの道具 | -35,000円 |
| 出張の交通費 | -40,000円 |
| 予約管理アプリ・スマホ代のうち仕事で使った分 | -18,000円 |
| 所得(収入 − 必要経費) | 167,000円 |
この方の所得は167,000円です。20万円以下なので、他に申告が必要な事情がなければ、所得税の確定申告はいりません。「38万円ももらったから申告だ」と思い込んでいた方は、ここで安心できます。
反対のパターンも見ておきます。指名が増えて年間の施術料が60万円になり、経費が22万円だったとします。この場合の所得は38万円です。20万円を超えているので、確定申告が必要になります。
気をつけたいのは、経費として引ける金額は「記録が残っているもの」だけ、ということです。ジェルを買ったレシートを捨ててしまうと、実際には払っていても計算に入れられません。結果として所得が大きく見え、20万円を超えてしまうこともあります。ネイリストの経費として認められやすいものはネイリストの経費一覧にまとめていますので、買い物のたびに確認してみてください。
もうひとつ。ジェルライトやスマホのように、仕事にもプライベートにも使うものがあります。この場合は全額ではなく、仕事で使った割合の分だけを経費にします。「週のうち何日使ったか」「何時間使ったか」など、自分で説明できる基準を決めて、その根拠をメモに残しておいてください。
20万円以下でも「住民税」は別。ここが落とし穴
「20万円以下だったから何もしなくていい」と考えてしまう方が多いのですが、これは半分だけ正解です。
私たちが払う税金には、国に納める所得税と、お住まいの市区町村に納める住民税があります。20万円のルールは、このうち所得税の話です。住民税には同じ決まりがありません。
- 確定申告をした場合…その内容が市区町村にも伝わるので、住民税の手続きを別にする必要はありません。
- 確定申告をしなかった場合…副業の分を市区町村が知る手立てがないため、住民税の申告が必要になることがあります。
住民税の申告が必要かどうか、書類の名前、提出先の窓口は、市区町村によって案内が違います。お住まいの自治体のホームページで「住民税 申告」と調べるか、役所の税務担当の窓口に確認してください。副業の所得が少額でも、確認だけはしておくと安心です。
住民税の納め方は選べる
確定申告をする場合、申告書の第二表に「住民税に関する事項」という欄があります。ここには、給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税を「特別徴収(給与から天引き)」にするか「自分で納付」にするかを選ぶ項目があります。
「自分で納付」を選ぶと、副業の分の住民税は勤務先の給与から引かれず、自分で納付書などを使って納めることになります。国税庁の確定申告書の手引きにも、この選択ができることが書かれています。
ただし、これはあくまで税金の納め方の選択です。勤務先に副業が伝わらないことを保証するものではありません。運用は自治体によっても異なります。副業を始める前に、勤務先の就業規則を確認しておくことのほうが大切です。
その副業ネイル、「事業所得」?それとも「雑所得」?

確定申告が必要になったとき、次に決めることが所得の種類です。副業のネイルで得たお金は、事業所得になる場合と、雑所得(業務に係る雑所得)になる場合があります。
国税庁の通達では、事業所得にあたるかどうかは「その活動が、社会通念上、事業と呼べる程度で行われているか」で判定するとされています。そのうえで、こう書かれています。取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、業務に係る雑所得にあたる、と(収入が300万円を超え、かつ事業と認められる事実がある場合を除きます)。
むずかしく聞こえますが、読者のみなさんにとっての意味はシンプルです。帳簿をつけて保存しておくことが、事業として認めてもらうためのスタートラインだということです。
| 事業所得 | 業務に係る雑所得 | |
|---|---|---|
| 帳簿書類 | 記帳して保存していることが前提 | 保存がない場合はこちらになる |
| 青色申告 | 申請すれば選べる | 選べない |
| 経費 | 仕事に使った分を差し引ける | 仕事に使った分を差し引ける |
帳簿というと身構えてしまいますが、最初は「いつ・だれに・いくらで施術したか」「いつ・何を・いくらで買ったか」を並べた表があれば十分です。ノートでも表計算アプリでもかまいません。
事業として続けるなら、届出の期限も確認を
副業でも、事業として続けていくつもりなら、税務署への届出が関係してきます。期限は国税庁のページで次のように案内されています。
- 個人事業の開業・廃業等届出書…事業を始めた日が属する年分の、確定申告期限まで
- 所得税の青色申告承認申請書…青色申告をしようとする年の3月15日まで。その年の1月16日以後に事業を始めた場合は、開業した日から2か月以内
青色申告の申請は期限を過ぎると、その年は青色申告ができません。翌年からの適用になります。副業を本格化させるつもりなら、早めに出しておくほうが選択肢が広がります。
副業ネイリストが今日からできる5つのこと
難しい判断は後回しでかまいません。まずはこの5つだけ始めてください。年末に慌てなくて済みます。
- 施術のたびに、日付・金額をメモする。スマホのメモアプリでも予約管理アプリでも構いません。あとからまとめて思い出すのがいちばん大変です。
- 材料と道具のレシートを1か所に集める。封筒でも箱でも大丈夫です。ネットで買った分は注文履歴の画面を保存しておきます。
- プライベートと兼用のものは、割合を先に決める。スマホ代、自宅の一部を使っている場合の電気代などです。決めた根拠をメモに残します。
- 副業用の銀行口座を分ける。入金と支払いが1つの口座にまとまると、集計が一気に楽になります。
- 年末に「収入 − 経費」を計算する。20万円を超えていれば確定申告の準備へ。超えていなくても、住民税の扱いを自治体に確認します。
確定申告が必要になった場合、申告と納税の期間は原則として翌年の2月16日から3月15日までです。期限が土曜・日曜・祝日にあたるときは、その翌日が期限になります。1月中に書類がそろっていれば、直前に慌てることはありません。
よくある質問
副業の所得が20万円以下なら、本当に何も手続きしなくていいですか?
所得税の確定申告は不要になることがあります。ただし住民税は別で、お住まいの市区町村への申告が必要になることがあります。また、医療費控除やふるさと納税などで税金を返してもらう申告(還付申告)をする場合は、20万円以下の副業の所得も含めて申告する必要があります。「20万円以下だから書かなくていい」とはならない点にご注意ください。
友人や家族へのネイルも収入に入れるのですか?
お金を一切受け取っていないなら、収入にはなりません。一方で、材料費として一部だけもらっている場合や、友人価格で施術料を受け取っている場合は、受け取った金額が収入になります。金額が小さくても、受け取ったものは記録に残しておいてください。あとから合計したときに、思ったより多かったというケースは少なくありません。
会社に副業を知られたくありません。税金の手続きで防げますか?
確定申告書の第二表で、給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税について「自分で納付」を選ぶことはできます。ただしこれは納め方を選ぶ仕組みであって、勤務先に知られないことを保証するものではありません。運用は自治体によっても異なります。まずは勤務先の就業規則で副業の扱いを確認することをおすすめします。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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