ネイリストの所得税は「売上−経費−控除」に税率をかけるだけ。5つのステップで、自分の税額の目安を出せるようになります。
「確定申告で税金がいくらになるのか、毎年ドキドキする」。そんな声をネイリストの方からよく聞きます。業務委託の報酬や指名売上は分かっていても、そこから税金がどう決まるのかは見えにくいものです。
この記事では、所得税の計算の流れを5つのステップに分けて説明します。2026年分(2027年に申告する分)の基礎控除や税率にもとづいて、ネイリストの実例で計算してみます。10月の今から目安をつかんでおけば、年末までに打てる手も見えてきます。
所得税の計算は5つのステップで決まる
所得税は、1月1日から12月31日までの1年間のもうけにかかる税金です。売上にそのまま税率をかけるわけではありません。次の順番で、少しずつ金額を小さくしてから税率をかけます。
- ステップ1:1年間の売上(収入)を合計する
- ステップ2:売上から経費を引いて「所得(もうけ)」を出す
- ステップ3:青色申告なら「青色申告特別控除」を引く
- ステップ4:基礎控除や社会保険料控除などの「所得控除」を引く
- ステップ5:残った金額(課税される所得)に税率をかける
ポイントは、税率をかける前に引けるものが2種類あることです。1つはお仕事に使ったお金である「経費」です。もう1つは、生活の事情に合わせて国が用意している「所得控除」です。どちらも多いほど、税率をかける金額が小さくなります。
ステップ1・2:売上と経費から「所得」を出す
売上には、サロンから受け取る業務委託の報酬、ホームサロンや出張ネイルのお客様からの代金、指名料などをすべて含めます。報酬から所得税が差し引かれて振り込まれている場合でも、差し引かれる前の金額が売上です。
経費は、ジェルやポリッシュなどの材料費、ネイルマシンやUVライト、筆やニッパー、シェアサロンの席代、検定やセミナーの受講料などです。どこまでが経費になるかはネイリストの経費一覧にまとめています。売上から経費を引いた残りが、事業の「所得」です。
ステップ3:青色申告特別控除を引く
青色申告をしている方は、所得からさらに「青色申告特別控除」を引けます。金額は帳簿のつけ方と提出方法で変わります。
| 条件 | 控除額 |
|---|---|
| 複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書をつけて期限内に申告 | 最高55万円 |
| 上の条件に加えて、e-Taxで申告する(または優良な電子帳簿で保存する) | 最高65万円 |
| 上記以外の青色申告 | 最高10万円 |
| 白色申告 | なし |
最高65万円や55万円の控除を受けるには、確定申告の期限(翌年3月15日)までに申告書を出すことが条件です。期限を過ぎると最高10万円になってしまうので注意しましょう。
ステップ4:所得控除を引く
所得控除は全部で16種類あります。ネイリストの方の多くが使うのは次のようなものです。
- 基礎控除:ほぼすべての人が使える控除。2026年分は合計所得金額489万円以下なら104万円
- 社会保険料控除:1年間に払った国民健康保険料や国民年金保険料の全額
- 小規模企業共済等掛金控除:iDeCoや小規模企業共済の掛金の全額
- そのほか:生命保険料控除、医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税)、扶養控除など
2026年分の基礎控除は、税制改正で金額が変わりました。合計所得金額(ほかに収入がなければ、ステップ3まで終えた事業の所得とほぼ同じです)によって、次のように決まります。
| 合計所得金額 | 2026年分の基礎控除 |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 62万円 |
| 2,350万円超 | 48万円以下(段階的に減り、2,500万円超は0円) |
ステップ5:税率をかける
所得控除まで引いた残りが「課税される所得金額」です。1,000円未満は切り捨てます。この金額に、国税庁の「所得税の速算表」を当てはめます。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
計算式は「課税される所得金額×税率−控除額」です。さらに、2026年分は所得税に2.1%の「復興特別所得税」が上乗せされます。合計した税額の100円未満は切り捨てます。
ネイリストの実例で計算してみる
ここでは、業務委託とホームサロンを掛け持ちしているネイリストAさんを例にします。数字は計算の流れを見るための仮のものです。
- 1年間の売上:400万円(業務委託の報酬と、ホームサロンの売上の合計)
- 経費:120万円(ジェル・ポリッシュ代、ネイルパーツ、ネイルマシン、交通費など)
- 1年間に払った国民健康保険料と国民年金保険料:合計50万円
- ほかの所得控除:なし
青色申告(65万円控除)の場合
- ステップ2:400万円−120万円=280万円
- ステップ3:280万円−65万円=215万円(これが合計所得金額)
- ステップ4:215万円−基礎控除104万円−社会保険料控除50万円=61万円
- ステップ5:61万円×5%=30,500円
- 復興特別所得税:30,500円×2.1%=640円
- 合計:31,140円→100円未満を切り捨てて31,100円
白色申告の場合
- ステップ2:400万円−120万円=280万円
- ステップ3:青色申告特別控除はないので280万円のまま
- ステップ4:280万円−104万円−50万円=126万円
- ステップ5:126万円×5%=63,000円
- 復興特別所得税:63,000円×2.1%=1,323円
- 合計:64,323円→100円未満を切り捨てて64,300円
同じ売上と経費でも、所得税だけで33,200円の差がつきました。住民税や国民健康保険料も所得をもとに決まるため、実際の差はもっと大きくなることがあります。
源泉徴収されている分は差し引ける
サロンによっては、業務委託の報酬から所得税を差し引いて(源泉徴収して)振り込んでいることがあります。この場合、確定申告で計算した税額から、すでに差し引かれた分を引くことができます。差し引かれた分のほうが多ければ、その差額は還付されます。報酬明細や支払調書で、差し引かれた金額を確認しておきましょう。
税額を左右するのは「経費」と「控除」の漏れ
計算の流れを見ると、税額を減らせる場面は「経費」と「所得控除」の2か所だと分かります。たとえば課税される所得が5%の段階にある方なら、経費の計上漏れが1万円あると、所得税は約500円多くなります。住民税にも影響するので、小さなレシートでも残しておく価値があります。
逆に、税率の段階が上がっても、所得全体に高い税率がかかるわけではありません。速算表の「控除額」は、段階ごとに税率が上がる仕組みを計算しやすくするためのものです。「売上が増えると損をする」ということはないので、安心して指名売上を伸ばしてください。
自分の税額の目安を出すチェックリスト
年末を待たずに、今のうちに次の手順で目安を出しておきましょう。
- 1月から今月までの売上を合計し、12か月分に引き直して年間の見込みを出す
- 同じように経費を合計する(レシートや明細が足りない月がないか確認する)
- 青色申告の承認を受けているか、e-Taxで申告できる準備があるかを確認する
- 国民健康保険料・国民年金保険料・iDeCoなど、今年払う予定の金額を書き出す
- 秋に届く生命保険料や国民年金の控除証明書を、捨てずに保管しておく
- サロンの報酬明細で、源泉徴収された金額があるかを確認する
- ここまでの数字を5つのステップに当てはめて、所得税の目安を出す
目安が出ると、「年末までに必要な道具を買っておくか」「iDeCoや小規模企業共済を始めるか」といった判断がしやすくなります。ただし、経費は実際にお仕事に必要なものに限ります。節税のためだけに不要なものを買うと、手元のお金が減るだけなので気をつけましょう。
なお、確定申告は2027年1月以降に、2026年1月から12月の分をまとめて行います。数字の集め方が分からない、そもそも自分が青色申告なのか分からないという方は、早めに専門家に相談しておくと安心です。当サイトは税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスです。運営者については運営者情報をご覧ください。
よくある質問
売上が少なくても所得税はかかりますか?
税金がかかるかどうかは、売上ではなく「課税される所得金額」で決まります。売上から経費や青色申告特別控除、所得控除を引いた結果が0円以下なら、所得税はかかりません。ただし、所得税が0円でも、住民税の申告が必要になる場合や、報酬から差し引かれた所得税を取り戻すために確定申告をしたほうがよい場合があります。
住民税も同じ計算で決まりますか?
住民税も「売上−経費−控除」という流れは同じですが、基礎控除などの控除額や税率が所得税とは異なります。確定申告をすれば、その内容をもとにお住まいの市区町村が住民税を計算するため、住民税のために別の申告をする必要は原則ありません。
2027年分からは税率が変わると聞きました。
所得税の税率(5%〜45%)そのものは変わりません。変わるのは上乗せ分で、2027年1月1日以後に生じる所得から、復興特別所得税が1.1%に引き下げられ、新たに防衛特別所得税がかかることになっています。2026年分の確定申告では、これまでどおり2.1%の復興特別所得税で計算します。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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