ネイリストの赤字|青色申告なら3年繰り越せる2026

ネイリストが白紙のノートと電卓で一年の売上と経費を見直し、赤字の繰り越しを確認している水彩イラスト

カテゴリ:

売上より経費が多かった年の赤字は、青色申告なら翌年から3年間持ち越して、あとの年の税金を減らすのに使えます。

ネイリストの赤字は、捨てずに3年間持ち越せます

開業した年、機材をまとめて入れ替えた年、体調をくずして施術を減らした年。売上より経費が多くなる年はあります。

税金の世界では、この赤字を「純損失」と呼びます。

国税庁は青色申告制度の説明で、純損失について「その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除します」としています。

つまり今年の赤字は、来年・再来年・その次の年の税金を減らす材料になります。

ただし自動では起きません。条件を満たして申告した人だけが使えるしくみです。

「赤字だから申告しなくていい」と思って何もしなかった年は、その赤字がそのまま消えてしまいます。

ネイリストが赤字になりやすい3つの場面

1 開業した年

いちばん多いのが開業した年です。

ネイルマシン、UVライト、集塵機、施術チェア、ワゴン。さらにジェルやポリッシュ、パーツの初期そろえ。

お客様がまだ少ない時期に、出ていくお金だけが先に集中します。

ホームサロン開業1年目の例金額
施術の売上1,800,000円
ジェル・ポリッシュ・パーツなどの材料費480,000円
機材・施術チェアなどの減価償却費260,000円
内装・備品350,000円
家賃や光熱費の按分、通信費420,000円
講習・セミナー、広告、その他890,000円
差引(事業の所得)▲600,000円
金額は説明のための一例です。

2 大きな買い物や引っ越しがあった年

集塵機の入れ替え、サロンの移転、自宅サロンの内装のやり直し。

数年に一度のまとまった支出が重なると、売上が順調でも赤字になることがあります。

3 施術できる日が減った年

出産、育児、家族の介護、ご自身の体調。手を使う仕事だからこそ、休む時期はあります。

売上が落ちても、家賃や通信費、サブスクの支払いは続きます。

「まとめ買いすれば赤字になる」ではありません

ここで2つ、思い違いしやすい点があります。

ひとつめは材料の在庫です。年末に残っているジェルやパーツは、その年の経費から差し引いて計算します。

国税庁の記帳の手引きでも、売上原価は「年初の棚卸高+その年の仕入高-年末の棚卸高」で計算すると説明されています。

ふたつめは機材です。取得価額が10万円未満のもの、または使用可能期間が1年未満のものは、その年に全額を経費にできます。

それ以外は、使える年数にわたって分けて経費にするのが原則です。買った年に全額とはなりません。

何がどこまで経費になるかはネイリストの経費一覧にまとめています。あわせてご覧ください。

まず同じ年の中で差し引きます(損益通算)

赤字は、いきなり翌年へ回すわけではありません。最初にその年のほかの所得と差し引きします。これを損益通算といいます。

国税庁は、損益通算の対象になる所得として不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つを挙げています。ネイルの仕事は事業所得です。

サロン勤務のアルバイトと掛け持ちしている方は、ここが大きな意味を持ちます。

ネイル事業の赤字を、その年の給与などの所得から差し引けるからです。給与から引かれていた所得税が戻ってくることもあります。

逆に、給与や雑所得そのものの計算で生じた損失は、ほかの所得から差し引けません。

だからこそ、ネイルの収入を「事業所得」として申告できているかが分かれ目になります。

残った赤字を、翌年から3年かけて使います

損益通算をしても引ききれなかった赤字が、繰り越せる純損失です。

先ほどの60万円の赤字を例に、その後の3年を追ってみます。

年その年の事業の所得使う繰越額差引後
1年目▲600,000円-600,000円を翌年へ
2年目400,000円400,000円0円(残り200,000円を翌年へ)
3年目900,000円200,000円700,000円
4年目1,200,000円0円1,200,000円
金額は説明のための一例です。

2年目と3年目の所得が下がった分、所得税も住民税も軽くなります。

ポイントは3つです。

  • 使えるのは翌年以後3年間です。4年目に持ち越すことはできません
  • 途中で使いきれなかった残りは、順に次の年へ送ります
  • 赤字の年に青色申告特別控除で赤字を増やすことはできません

3つめは見落としがちです。青色申告特別控除は65万円・55万円・10万円の3段階ですが、国税庁は控除額について「所得金額の合計額が控除額より少ない場合には、その合計額が限度」と説明しています。

赤字の年は、そもそも差し引く所得がありません。控除で赤字を大きくすることはできない、と覚えておけば十分です。

3年繰り越すための条件チェックリスト

ここがこの記事でいちばん大事なところです。次の4つがそろってはじめて繰り越せます。

1 青色申告の承認を受けている

純損失の3年繰越は、青色申告者のための制度です。

青色申告承認申請書の提出期限は、原則としてその年の3月15日です。新しく開業した方は、業務を始めた日から2か月以内とされています。

開業した年に赤字が出やすいのに、申請が間に合わないと繰り越せない。これがいちばんもったいないパターンです。

2 帳簿をつけて「事業所得」として申告する

所得税基本通達35-2の注では、事業所得と認められるかどうかは、その活動が社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するとされています。

そのうえで、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には、業務に係る雑所得に該当することに留意するとも書かれています。

言いかえると、帳簿を残していることが土台になります。予約表とレシートだけでは足りません。

3 赤字の年も確定申告書を出す

赤字の年は納める所得税がないことが多いため、申告を省いてしまう方がいます。

ですが、繰り越すには赤字が出た年の確定申告書を提出する必要があります。

このときは、損失申告用の第四表という用紙を添えて提出します。確定申告書等作成コーナーや会計ソフトを使えば、案内にしたがって作成できます。

4 その後も続けて毎年申告する

純損失の繰越控除は、損失が生じた年の申告をしたうえで、その後において連続して確定申告書を提出している場合に適用されます。

途中の年を1年飛ばすと、そこで繰越が途切れます。

「今年も赤字だから出さなくていいか」と2年目を飛ばしてしまい、3年目に使えなくなる。これが現場でいちばん多い失敗です。

白色申告のままだとどうなる?

白色申告の場合、純損失をまるごと繰り越すことはできません。

繰り越せるのは、純損失のうち変動所得の損失や、災害で事業用の資産が受けた損失など、限られたものだけです。

ネイルの仕事でよくある「経費が売上を上回った」という赤字は、ここに当てはまりません。

来年こそ大きな買い物をする予定がある方は、3月15日までに青色申告の申請を出しておきましょう。

前の年に税金を納めていたら「繰戻し還付」も選べます

繰り越すのではなく、前の年にさかのぼって取り戻す方法もあります。純損失の繰戻し還付です。

今年の赤字を前年の所得から差し引いて税額を計算し直し、差額を返してもらうしくみです。

国税庁の手続案内によると、対象になるのは前年分の青色申告書を提出している青色申告者です。

提出時期は「確定申告期限内に提出してください」とされています。用紙の名前は「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」です。

こんなとき向いている方法
前年は売上が良く、所得税を納めた繰戻し還付を検討します
開業したばかりで前年は申告していない3年繰越しか使えません
来年以降、売上が伸びる見込み繰越して先の年で使う手もあります
今すぐ手元のお金が必要繰戻し還付が早く効きます

どちらが得かは、来年の売上の見通しで変わります。判断に迷ったら、数字を出したうえで相談してください。

赤字の年こそ、申告しておきましょう

納める所得税がゼロでも、申告しておく理由が3つあります。

  • 赤字を3年繰り越すための条件になります
  • 住民税は前年の所得をもとに計算されます。所得の状況が伝わります
  • 報酬から所得税が引かれていた場合、その分が戻ることがあります

サロンとの業務委託で報酬から所得税が引かれている方は、3つめが特に効きます。赤字の年は、引かれた分がまるごと戻る計算になることもあります。

国民健康保険料の計算にも所得の情報が使われますが、扱いは市区町村ごとに違います。お住まいの窓口でご確認ください。

確定申告の期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までです。2026年分なら2027年2月16日から3月15日までになります。

今日からできる4ステップ

  • ステップ1 1月からの売上と経費をざっと集計し、今年が赤字になりそうか見てみます
  • ステップ2 自分が青色申告の承認を受けているか確認します。分からなければ税務署に照会できます
  • ステップ3 年末に向けて、ジェルやパーツの在庫を数える準備をします
  • ステップ4 赤字でも申告書を出します。そして翌年以降も、続けて出します

9月の今なら、年内にできる手当てがまだ間に合います。赤字が見えてきた段階で動くほうが、選べる道は広くなります。

よくあるご質問

赤字なら確定申告はしなくてもいいのでは?

納める所得税がないケースは多いです。ですが、赤字を翌年以後3年間繰り越すには、赤字が出た年の確定申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出していることが条件になります。出さなかった年の赤字は使えません。報酬から所得税が引かれていた方は、還付になることもあります。

今は白色申告です。去年の赤字を今から繰り越せますか?

白色申告で繰り越せるのは、変動所得の損失や、災害で事業用資産が受けた損失など限られたものだけです。経費が売上を上回った通常の赤字は対象外になります。これからの年について青色申告に切り替えるには、原則としてその年の3月15日までに青色申告承認申請書を出します。

サロンのアルバイトと掛け持ちです。ネイル事業の赤字は給与と相殺できますか?

事業所得は損益通算の対象なので、同じ年の給与などの所得から差し引けます。前提として、帳簿をつけて事業所得として申告できていることが必要です。帳簿書類の保存がない場合は雑所得と扱われることがあり、その場合は損失を他の所得から差し引けません。

制度の細かい判断は、働き方や数字によって変わります。ネイリスト専門の確定申告サービスの考え方は運営者情報をご覧ください。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

まずは無料相談から

「自分の場合いくらになるのか」だけでも構いません。公式LINEで無料相談を受け付けています。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です