ネイリストの確定申告は、スマホとマイナンバーカードがあれば、税務署に行かずに家から送れます。
しかも、紙で出すか、e-Taxで送るかで、控除の金額が10万円変わることがあります。この記事では、ネイリストに関係する部分だけに絞って、e-Taxのしくみと手順、そして2026年に決まった大きな変更点をまとめます。
e-Tax(イータックス)とは?ネイリストに関係する部分だけ
e-Taxは、国が用意しているインターネットで申告や納税ができるしくみです。正式には「国税電子申告・納税システム」といいます。
ネイリストにとっての使いどころは、ほぼひとつです。「確定申告書を、郵送や持ち込みではなくインターネットで税務署に送る」ことです。
使う場所は、国税庁のサイトにある「確定申告書等作成コーナー」です。画面の案内に沿って金額を入力していくだけで、所得税の申告書だけでなく、青色申告決算書や収支内訳書までつくれます。つくったデータは、そのままe-Taxで送信できます。金額は自動で計算されるので、電卓の打ち間違いによる計算ミスも起きません。
いつの分を、いつまでに出すのか
所得税の確定申告は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までに行います。期限も原則3月15日です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 集計する期間 | 2026年1月1日から12月31日までの売上と経費 |
| 申告する期間 | 2027年2月16日から3月15日まで(原則) |
| 送るもの | 所得税の確定申告書、青色申告決算書または収支内訳書 |
| 送る方法 | e-Tax、郵送、税務署の窓口のいずれか |
つまり今年の売上と経費は、来年の2月から3月にまとめて申告します。9月の今から準備しておけば、直前に慌てずに済みます。
ネイリストがe-Taxを使うと得する4つのこと

1. 青色申告特別控除が65万円になる
これが一番わかりやすい差です。青色申告特別控除の55万円を受けるには、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書などを申告書に添付して、期限までに提出することが条件になっています。
そのうえで65万円にするには、次のどちらかを満たす必要があります。
- その年分の仕訳帳と総勘定元帳について、電子帳簿保存を行うこと
- 申告書などの提出を、提出期限までにe-Taxを使って行うこと
電子帳簿保存のほうは、要件も届出も重たい話になります。個人でネイルサロンをしている人が現実的に選べるのは、e-Taxのほうです。
同じ帳簿、同じ売上、同じ経費でも、紙で郵送すれば55万円、e-Taxで送れば65万円。送り方だけで、控除できる金額が10万円変わります。
2. 戻ってくるお金が早く入る
サロンの業務委託で、報酬からあらかじめ税金が引かれている(源泉徴収されている)ネイリストは、確定申告をすると税金が戻ってくることがあります。これを還付といいます。
国税庁によると、e-Taxで提出された還付申告は3週間程度で処理されています。いっぽう、2月・3月の確定申告期間中は、還付金の支払手続におおむね1か月から1か月半程度の期間がかかるとされています。
ただし例外もあります。訂正申告などで同じ人が何度も申告している場合、書類に不備がある場合、紙で別に送る書類がある場合は、e-Taxで出しても3週間程度の対象外になります。
3. 深夜でも送れる
e-Taxは、メンテナンス時間を除いて24時間使えます。通常の時期は、火曜日から金曜日が24時間、月曜・土曜・日曜・祝日は8時30分から24時までです。所得税の確定申告の時期は、土日祝も含めて全日24時間になります。
サロンワークが終わってから、あるいは最後のお客様を送り出したあとに送れる。これはネイリストにとって現実的に一番大きいメリットかもしれません。税務署の開いている時間に合わせて予約を空ける必要がなくなります。
4. 控除の証明書を出さなくてよくなる
e-Taxで内容を入力して送信すれば、次のような書類は税務署への提出や提示を省略できます。
- 社会保険料控除の証明書(国民年金保険料の控除証明書など)
- 小規模企業共済等掛金控除の証明書
- 生命保険料控除の証明書
- 地震保険料控除の証明書
- 寄附金控除の証明書(ふるさと納税など)
ここで勘違いしやすいのは、「出さなくていい」は「捨てていい」ではないという点です。入力内容を確認するため、原則として法定申告期限から5年間、税務署からこれらの書類の提示や提出を求められることがあります。その求めに応じなかった場合は、申告書に添付や提示がなかったものとして扱われます。
国民年金の控除証明書は、ジェルやポリッシュのレシートと同じ引き出しにまとめて残しておいてください。何を経費として集めておけばよいかはネイリストの経費一覧で確認できます。
2026年の大きな変更|ID・パスワード方式が終わります
e-Taxの入り口には、大きく2つの方式があります。
| 方式 | 必要なもの | 使える場所 |
|---|---|---|
| マイナンバーカード方式 | マイナンバーカードと、読み取りに対応したスマホ(またはICカードリーダライタ) | 確定申告書等作成コーナーなど |
| ID・パスワード方式 | 税務署などで発行されたe-Tax用のID・パスワード | 確定申告書等作成コーナーのみ |
これまでは、マイナンバーカードを持っていなくても、税務署で本人確認をしてID・パスワードをもらえばe-Taxで送れました。ネイリストの中にも、この方式で申告してきた人は多いはずです。
ところが国税庁は2025年(令和7年)9月25日に、このID・パスワードの新規発行を停止するというお知らせを出しました。ID・パスワード方式は、もともとマイナンバーカードが普及するまでの暫定的な対応として運用されていたものです。
さらにe-Taxのサイトには、「ID・パスワード方式は、令和9年分確定申告からは利用できなくなる予定です」と書かれています。令和9年分とは、2027年1月から12月分のことです。
ネイリストの立場で整理すると、こうなります。
- これから初めてe-Taxを使う人:ID・パスワードは新しく発行されないため、マイナンバーカード方式を使うことになります
- すでにID・パスワードの届出をしている人:引き続き使えますが、いずれマイナンバーカード方式への切り替えが必要になります
結論はシンプルです。マイナンバーカードをまだ持っていないなら、確定申告の直前ではなく、今のうちに申請しておいてください。カードの交付には日数がかかりますし、1月から3月は窓口が混み合います。
スマホでe-Taxを送るまでの手順

先に手元にそろえるもの
- 有効期限内のマイナンバーカード
- マイナンバーカードの読み取りに対応したスマホ
- 利用者証明用電子証明書のパスワード(数字4桁)
- 署名用電子証明書のパスワード(英数字6文字から16文字)
- 1年分の売上がわかるもの(サロンからの報酬明細、指名売上や歩合の記録、現金売上のメモなど)
- 1年分の経費がわかるもの(ジェル・ポリッシュ代、ネイルマシンやジェルライト、筆やニッパー、検定やセミナーの受講料のレシート)
- 還付を受ける場合は、本人名義の口座番号
マイナンバーカードをスマホに登録して使う「スマートフォンのマイナンバーカード」も使えます。Androidはすでに利用できて、iPhoneも2026年(令和8年)1月から利用できるようになりました。使うにはマイナポータルで利用申請と登録が必要です。登録しておくと、カードをスマホにかざす手間がなくなり、機種によっては利用者証明用のパスワードの代わりに顔や指紋の認証が使えます。
送信までの流れ
- 国税庁のサイトから「確定申告書等作成コーナー」を開く
- 提出方法の選択で「e-Tax(マイナンバーカード方式)」を選ぶ
- マイナンバーカードを読み取ってログインする
- 先に青色申告決算書または収支内訳書をつくる(売上と経費を科目ごとに入力)
- そのまま所得税の確定申告書に進み、国民健康保険料や国民年金保険料などの控除を入力する
- 還付先の口座、または納める税金の払い方を入力する
- 内容を確認して送信する
マイナンバーカード方式なら、事前に税務署へ届出をしてID・パスワードの通知を受け取り、それを管理して入力する、という手間がいりません。ログインするだけで利用を始められます。e-Taxを使うために電子証明書を登録する事前準備も不要です。
マイナポータル連携で自動入力できるもの・できないもの
マイナポータル連携を使うと、控除証明書などの情報をマイナポータル経由でまとめて取得し、申告書の該当欄に自動入力できます。国税庁によると、令和6年分の確定申告では約310万人が利用しました。
対象になっているのは、たとえば次のものです。
- 収入関係:給与所得の源泉徴収票、公的年金等の源泉徴収票、株式の特定口座年間取引報告書
- 控除関係:医療費、ふるさと納税、社会保険(国民年金保険料など)、生命保険・地震保険、iDeCo、住宅ローン控除関係など
ここでネイリストが必ず知っておきたいのは、サロンからの業務委託の報酬は、この対象一覧に入っていないということです。パート・アルバイトの給与なら源泉徴収票が自動で入りますが、業務委託の報酬は自動では入りません。1年分の報酬明細を自分で並べて、売上として集計する必要があります。
もちろん、ジェル代やネイルマシンなどの経費も自動では入りません。自動入力が効くのは主に控除の部分だと考えておくと、準備の見積もりを間違えずに済みます。
なお自動入力を使うには、証明書を発行している側がマイナポータル連携に対応している必要があります。対応している発行主体の一覧は国税庁のサイトで随時更新されているので、そこで確認してください。
ネイリストがつまずきやすい5つのポイント
1. 電子証明書の有効期限がカードより先に切れる
マイナンバーカードには、カード自体の有効期限と、中に入っている電子証明書の有効期限があり、期限が別々です。
- カードの有効期限:発行時に18歳以上だった場合は、カード発行から10回目の誕生日まで
- 電子証明書の有効期限:年齢に関わらず、発行から5回目の誕生日まで
つまり、カードはまだ使えるのに、電子証明書だけ切れていることがあります。有効期限を過ぎるとe-Taxの手続きには使えません。しかも確定申告の時期は、市区町村の更新窓口の混雑が予想されます。誕生日が1月から3月のネイリストは、特に早めに確認しておいてください。
2. 還付の振込口座に屋号は使えない
還付金の受取に口座振込を選ぶ場合、口座名義に店名や事務所名などの屋号が含まれていると振り込めません。申告する本人の氏名のみの口座を使う必要があります。
サロン名を入れた口座を売上の入金用に使っているネイリストは少なくありません。その場合、還付の受取口座だけは個人名の口座を書いてください。
また、一部のインターネット専用銀行は還付金の振込ができません。使う予定の銀行に、還付金の振込が可能かをあらかじめ確認しておくと安心です。マイナポータルで公金受取口座を登録している人は、その口座を指定することもできます。
3. 1日遅れると控除が10万円になる
65万円と55万円の青色申告特別控除は、どちらも「確定申告期限までに申告書を提出すること」が条件になっています。期限を過ぎてから出した場合、この2つの要件に当てはまらなくなるため、控除は10万円になります。
e-Taxは深夜でも送れますが、期限日の夜になってから帳簿をつけ始めると、まず間に合いません。集計は年内から、送信は期限より前に、が安全です。
4. 送っただけでは納税は終わらない
申告書をe-Taxで送信しても、それだけで税金が引き落とされるわけではありません。納める税金がある場合は、期限までに別に納付の手続きが必要です。払い方は複数あり、国税庁のサイトに案内があります。
売上が伸びたネイリストほど、翌年に払う金額が想像より大きくなります。申告書を送った時点で納める金額はわかるので、その場で払い方まで決めてしまうのがおすすめです。
5. スマホだけで終わるかは準備次第
作成コーナーはスマホでもパソコンでも使えます。ただ、経費の件数が多い人や、月ごとの集計がまだできていない人は、スマホの小さい画面だけで入力すると時間がかかります。
1年分のレシートがまだ箱に入ったままなら、e-Taxの操作より先に集計から始めてください。逆に、月ごとの売上と経費が表になっているなら、スマホでも十分に終わります。帳簿づけから申告書の送信まで含めて任せたい場合は、税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスもあります(運営者情報)。
よくある質問
マイナンバーカードがなくてもe-Taxはできますか?
すでにID・パスワード方式の届出をしている場合は、そのID・パスワードで確定申告書等作成コーナーから送信できます。ただしID・パスワードの新規発行は停止されており、e-Taxのサイトでは令和9年分(2027年分)の確定申告からは利用できなくなる予定と案内されています。これから始めるなら、マイナンバーカードを用意するほうが確実です。
e-Taxで送ればレシートや証明書は捨ててよいですか?
いいえ、捨てないでください。e-Taxで内容を入力して送れば、控除の証明書は税務署への提出や提示を省略できますが、原則として法定申告期限から5年間は、提示や提出を求められることがあります。その求めに応じなかった場合は、添付や提示がなかったものとして扱われます。ジェル代やネイルマシンのレシートも、帳簿の裏づけとして保管が必要です。
会計ソフトで帳簿をつけていれば65万円の控除は受けられますか?
帳簿をつけているだけでは足りません。65万円の青色申告特別控除には、複式簿記や期限内申告などの条件に加えて、提出期限までにe-Taxで送ることか、仕訳帳と総勘定元帳について電子帳簿保存を行うことのどちらかが必要です。ソフトからそのまま送信できるのか、作成コーナーに入力し直して送るのか、送信までの流れを申告前に確認しておいてください。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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