ネイリストの専従者給与|家族に払うなら2026年の要件

ホームサロンの受付カウンターで、ネイリストと手伝う家族が白紙のノートと電卓を見ながら専従者給与の金額を確認しているイラスト

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お母さんやパートナーにサロンを手伝ってもらっているネイリストは、その人に払った給与を経費にできる「専従者給与」という制度が使えることがあります。

「受付と予約の返信は母に任せている」「材料の発注とレシート整理は夫がやってくれている」。ひとりサロンでも、家族に助けられている場面は意外と多いものです。

ただ、家族に払ったお金は、そのままでは経費になりません。ここには少し変わったルールがあります。この記事では、2026年時点のルールにそって、家族への給与を経費にする方法と、その前に知っておきたい注意点をまとめます。

家族に払った給与は、原則として経費にならない

まず押さえたいのが大前提です。生活をともにしている家族に給与を払っても、それは原則として必要経費になりません。

「生活をともにしている」は、税金の世界では「生計を一にする」と言います。同じ家に住んで家計が一緒、あるいは離れて暮らしていても生活費を送っている、といった関係です。

なぜ経費にならないのかというと、家族の間では金額を自由に決められてしまうからです。売上が多い年だけ家族に高い給与を払えば、いくらでも利益を減らせてしまいます。そこで所得税のルールでは、いったん全部ダメにしたうえで、条件を満たす場合だけ例外を認めるという形になっています。

その例外が次の2つです。

  • 青色事業専従者給与(青色申告をしている人が使える)
  • 事業専従者控除(白色申告の人が使える)

名前が似ていますが、中身はかなり違います。ざっくり言うと、青色は「実際に払った金額を経費にできる」、白色は「決められた金額だけ差し引ける」というイメージです。

ネイリストの場合、どんな家族が「専従者」になれる?

青色事業専従者になれるのは、次の3つをすべて満たす人です。

  • 青色申告をしている本人と生計を一にする配偶者、その他の親族であること
  • その年の12月31日の時点で15歳以上であること
  • その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事していること

白色申告の事業専従者も、この3つの条件は同じです。

「専ら従事」がいちばんのハードル

3つのうち、いちばん引っかかりやすいのが「6か月を超える期間、専ら従事」です。「専ら」は、そのサロンの仕事に専念している、という意味です。

たとえば、次のような働き方は条件を満たしやすいケースです。

  • 母が週5日、営業時間中ずっと受付とお客様対応、予約の返信を担当している
  • パートナーが日中サロンに入り、ジェルやファイルの在庫管理、発注、レシート整理、SNS投稿を通年で担当している
  • 姉妹がアシスタントとして施術前後の準備や片づけ、器具の消毒を毎日担当している

逆に、「忙しい月だけ手伝ってもらう」「土曜の午後だけ来てもらう」といった関わり方だと、6か月を超えて専ら従事しているとは言いにくくなります。

また、ほかに勤め先がある家族や、学校に通っている家族は、サロンの仕事に専念しているとは認められないと判断されることがあります。「夫は会社員だけど、夜だけ帳簿を見てくれている」というケースは、専従者給与には向きません。判断に迷うときは、自分のケースを個別に確認してください。

青色と白色で、経費にできる金額はこれだけ違う

条件を満たしたとして、いくら経費にできるのかを比べます。

 青色申告(青色事業専従者給与)白色申告(事業専従者控除)
経費にできる額実際に払った給与のうち、労務の対価として相当と認められる金額配偶者は最高86万円、15歳以上のその他の親族は1人につき最高50万円
金額の上限法律で決まった上限額はないが、過大な部分は経費にならない上の金額と「控除前の事業所得等の金額÷(専従者の数+1)」の低いほう
事前の届出必要(届出書の提出期限あり)不要(申告書に記載する)
実際にお金を払う必要あり(届出の方法・金額の範囲内で支払う)なし(払っていなくても控除できる)

白色の計算例

白色申告で、配偶者1人に手伝ってもらっているホームサロンの例です。

  • この控除をする前の事業所得が150万円のとき
    150万円 ÷(1+1)=75万円。86万円より低いので、差し引けるのは75万円
  • この控除をする前の事業所得が300万円のとき
    300万円 ÷(1+1)=150万円。86万円のほうが低いので、差し引けるのは86万円

白色は「実際に払ったかどうか」に関係なく決まった枠で差し引く形なので、手軽な反面、金額の上限がはっきりしています。しっかり働いてもらっていて、それに見合う給与を払いたいなら、青色申告のほうが幅があります。青色申告そのものの仕組みはネイリストの経費一覧とあわせて確認しておくと、どこまでを事業のお金として整理すればよいかがつかみやすくなります。

青色でも「いくらでもOK」ではない

青色事業専従者給与に金額の上限はありません。ただし、認められるのは「労務の対価として相当であると認められる金額」までです。過大とされる部分は経費になりません。

目安になるのは、「同じ仕事を家族以外の人にお願いしたら、いくら払うか」です。受付と予約対応で週5日・1日6時間なら、地域のサロンスタッフの募集条件と比べてみる。逆に、月に数時間の作業に月20万円といった金額は説明がつきません。

見落としがち:専従者にすると扶養から外れる

ここがいちばん大事なポイントです。青色事業専従者として給与を受け取る人、または白色申告者の事業専従者である人は、同一生計配偶者や扶養親族になれません。

つまり、これまで配偶者控除や扶養控除を受けていた家族を専従者にすると、その控除は使えなくなります。

  • 配偶者控除は、本人の合計所得金額が900万円以下で一般の控除対象配偶者の場合、38万円
  • 扶養控除は、一般の控除対象扶養親族で38万円

なお2026年分の配偶者控除は、配偶者の合計所得金額が62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)であることが条件のひとつです。この62万円という金額は2026年12月1日に施行され、2026年分から適用されるものです。扶養控除の所得要件も、2026年分から62万円以下になります。

ですから、「専従者給与にすればまるまる得」ではありません。ざっくり言えば、こう考えます。

  • 専従者給与にして減る利益 -(失う配偶者控除または扶養控除38万円)= 実際に減る所得
  • 加えて、給与を受け取る家族側にも所得税・住民税がかかる可能性がある

白色の配偶者86万円に対して失う控除が38万円なら、差し引き48万円分がプラスという見方ができます。一方で、年間40万円程度しか払わないのであれば、控除を残したほうが有利になることもあります。世帯全体で見ると損をするパターンもあるので、金額を決める前に一度シミュレーションしておくと安心です。

手続きの流れとチェックリスト

青色事業専従者給与を使う場合、やることは大きく5つです。

1. 青色申告の承認を受けておく

青色事業専従者給与は青色申告の特典です。まだ白色の人は、先に青色申告承認申請の手続きが必要になります。

2.「青色事業専従者給与に関する届出書」を出す

これを出していないと、いくら払っても経費になりません。提出先は納税地の所轄税務署長です。

  • 提出期限は、経費に入れたい年の3月15日まで
  • その年の1月16日以後に新しく事業を始めた場合や、新しく専従者がいることになった場合は、その日から2か月以内

届出書には、専従者の氏名、仕事の内容、給与の金額、支給する時期などを書きます。あとで専従者が増えたり給与を増額したりするときは、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく出します。

つまり、「今年の分を今から」というのは原則できません。来年から始めたいなら、来年の3月15日までに出す、と覚えておいてください。

3.「給与支払事務所等の開設届出書」を出す

人に給与を払い始めると、給与を払う事務所を開いたことを届け出る必要があります。提出期限は、開設の事実があった日から1か月以内です。

4. 源泉徴収の準備をする

給与を払う側は、所得税を天引きして国に納める立場になります。家族への専従者給与も例外ではありません。

ただし、天引きする金額が必ず発生するわけではありません。専従者から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を受け取っていれば、源泉徴収税額表の月額表・甲欄を使います。2026年分(令和8年分)の月額表では、その月の社会保険料等を差し引いたあとの給与が105,000円未満なら、税額は0円です。

月10万円で設定しているケースが多いのは、この線があるからです。なお105,000円以上107,000円未満だと、扶養親族等の数が0人の場合で170円になります。

5. 納期の特例を検討する

天引きした所得税は原則として毎月納めますが、給与の支給人員が常時10人未満なら「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を出すことで、半年分をまとめて納められます。

  • 1月から6月までに天引きした分 … 7月10日まで
  • 7月から12月までに天引きした分 … 翌年1月20日まで

ひとりサロンで専従者が1人なら、まず使える特例です。毎月の納付を忘れるリスクが減ります。

運用で気をつけること

  • 給与は口座振込にする。手渡しだと、実際に払った証拠が残りにくくなります
  • 届出書に書いた金額の範囲内・書いた方法で払う
  • 仕事の内容と時間の記録を残しておく(シフト表やメモ程度でも、何もないよりずっと良い)
  • 受け取った家族の側にも、住民税や国民健康保険料の影響が出ることがある

よくある質問

繁忙期だけ母に受付を手伝ってもらっています。専従者給与にできますか。

難しいと考えてください。青色事業専従者の条件のひとつが「その年を通じて6か月を超える期間、専ら従事していること」だからです。繁忙期の数か月だけ、あるいは月に数日だけという関わり方では、この条件を満たしません。年間を通して受付や在庫管理を任せる形に変えられるかどうかが分かれ目になります。

専従者給与はいくらまで払っていいですか。

青色事業専従者給与に、法律で決まった上限額はありません。ただし経費にできるのは「労務の対価として相当であると認められる金額」までで、過大な部分は経費になりません。同じ仕事を家族以外の人に頼んだらいくら払うか、という物差しで考えるとぶれにくくなります。さらに、届出書に書いた金額の範囲内で支払う必要もあります。

専従者にすると、扶養から外れて損をしませんか。

専従者として給与を受け取る人は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれません。そのため配偶者控除や扶養控除(一般の場合38万円)は使えなくなります。給与として経費にできる金額が、失う控除より十分大きいかどうかで判断します。受け取る家族側の所得税・住民税や、世帯の国民健康保険料への影響もあわせて見ておくと安心です。

専従者給与は、届出の期限を逃すとその年はもう使えません。逆に言えば、期限までに準備しておけば毎年続けて使える制度です。どこまでが事業の支出なのかという整理そのものに不安がある方は、運営者情報もあわせてご覧ください。税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスです。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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