シェアサロンで働くネイリストは、原則として自分で確定申告をする個人事業主です。サロンに払う席代の扱い、開業届の期限、青色申告の使い方まで、税金がはじめての方に向けてやさしくまとめました。
シェアサロンで働くネイリストは「個人事業主」です
シェアサロンとは、施術スペースを時間単位や月単位で借りて、自分のお客様を自分で施術する働き方です。集客も価格設定も自分でおこない、いただいた施術代がそのまま自分の売上になります。
この働き方は、税金の世界では「自分でお店をやっている人」と同じ扱いです。国税庁は、サービス業その他の事業から生じる所得を「事業所得」と説明しています。ネイルの施術は、まさにこのサービス業にあたります。
大切なのは、給料をもらっている人ではない、という点です。会社員やアルバイトのように年末調整をしてくれる人はいません。そのため、1年間の売上と経費を自分で集計し、確定申告をする必要があります。
業務委託・シェアサロン・ホームサロンの違い
同じフリーランスのネイリストでも、お金の流れは働き方によって変わります。整理すると次のとおりです。
| 働き方 | 売上の受け取り方 | サロンに払うお金 |
|---|---|---|
| サロンの業務委託 | サロンから報酬として受け取る | 基本的になし(報酬から差し引かれる形) |
| シェアサロン | お客様から直接いただく | 席代・スペース利用料を払う |
| ホームサロン(自宅サロン) | お客様から直接いただく | なし(自宅の家賃などを按分) |
どの働き方でも、確定申告が必要になる点は変わりません。違うのは「何が経費になるか」です。シェアサロンの場合、いちばん大きな経費が席代になります。
シェアサロンの席代は経費にできます

国税庁は必要経費について、「総収入金額を得るために直接要した費用」と「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用」を算入できると説明しています。
席代は、施術する場所を借りるために払うお金です。その場所がなければ売上が立ちません。ですから、売上を得るために直接必要な費用として、経費にできます。
料金の形はいろいろあります
シェアサロンの料金は、サロンによって形が違います。代表的なのは次の3つです。
- 月額制:たとえば月30,000円(税抜)を毎月払う形
- 時間制・1日単位:たとえば1日3,000円(税抜)を使った日だけ払う形
- 歩合制:その日の売上の一定割合を払う形
どの形でも、経費になるという結論は変わりません。歩合制の場合も、お客様からいただいた金額の全額が売上、サロンに渡した金額が経費、という形で分けて記録します。手元に残った差額だけを売上として書くのは誤りです。
帳簿に書くときの科目
席代は、一般的に「地代家賃」や「賃借料」といった科目で記録します。どちらが絶対の正解と決まっているわけではありません。大事なのは、いったん決めたら毎年同じ科目でそろえることです。年によって科目がころころ変わると、自分でも比較できなくなります。
また、席代の領収書や明細は必ず保管してください。銀行振込や自動引き落としで払っている場合は、通帳の記録も証拠になります。現金で払っていて何も残っていない、という状態がいちばん困ります。
席代以外に経費にできるもの・注意が必要なもの
シェアサロンでは、材料や道具を自分で用意することがほとんどです。つまり、席代のほかにも経費にできるものがたくさんあります。
経費になりやすいもの
- ジェル、ポリッシュ、トップコート、リムーバーなどの材料費
- 筆、ニッパー、ファイル、ダストブラシなどの道具
- ネイルチップ、ストーン、パーツ類
- ネイルマシン、UVライト、集塵機などの機材
- 自宅からシェアサロンまでの交通費
- 予約管理アプリや決済アプリの利用料
- 名刺、ショップカード、SNS広告の費用
- お客様にお出しする飲み物やお菓子
どれも「売上を得るために必要かどうか」が判断のものさしです。何にいくら使っているかを整理したい方は、ネイリストの経費一覧もあわせてご覧ください。
検定やセミナーの受講料も、いまの仕事の技術を高めるためのものであれば経費として扱えます。ただし、これから別の職種に転身するための勉強や、趣味に近い講座は性質が変わります。受講の目的を、あとから自分の言葉で説明できるようにしておくと安心です。
ネイルマシンや集塵機のように、ある程度の金額になる機材は、買った年に全額を経費にできない場合があります。金額によって扱いが変わるためです。高額な機材を買ったときは、レシートを残したうえで、購入日と金額をメモしておいてください。
プライベートと兼用のものは「区分」が必要です
スマホ代のように、仕事にも生活にも使うものがあります。こうした費用は「家事関連費」と呼ばれます。
国税庁は、家事関連費のうち必要経費になるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」と説明しています。
むずかしく聞こえますが、意味はシンプルです。「なんとなく半分」ではなく、「こういう理由でこの割合です」と説明できる形にしておく、ということです。たとえばスマホなら、予約の連絡やSNS更新にどれくらい使っているかを一定期間メモして、その割合を根拠にする方法があります。
逆に、自分の生活費、家族との食事代、仕事と関係のない買い物は経費になりません。ここを無理に入れてしまうと、あとで指摘されたときに困るのはご自身です。
シェアサロンで始めたらやること、6つの手順

やることは多く見えますが、順番どおりに進めれば大丈夫です。
1. 開業届を出す
「個人事業の開業・廃業等届出書」を、事業の開始があった日から1か月以内に、納税地を所轄する税務署へ提出します。用紙は国税庁のサイトからダウンロードできます。
2. 青色申告承認申請書を出す
青色申告を使いたい場合は、別の書類が必要です。新しく事業を始めた方は、業務を開始した日から2か月以内が期限です。すでに事業をしている方が青色申告に切り替える場合は、青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までとなります。
この期限を過ぎると、その年は青色申告が使えません。開業届と一緒に出してしまうのがおすすめです。
3. 仕事用の口座とカードを分ける
これは法律上の義務ではありませんが、あとの作業がまるで違います。席代の引き落とし、材料の仕入れ、売上の入金を1つの口座にまとめると、通帳がそのまま帳簿の下書きになります。
4. 売上と経費を記録する
売上は施術ごとに、日付・メニュー・金額を残します。現金でいただいた分も忘れずに記録してください。経費は、席代のように毎月決まって出ていくものと、材料のように都度買うものに分けて考えると整理しやすくなります。
キャッシュレス決済を使っている場合は、注意が必要です。お客様が7,000円(税抜)のメニューを選び、決済手数料が引かれて入金された場合、売上はあくまでメニューの金額です。差し引かれた手数料は、支払手数料として経費に計上します。入金された金額だけを売上として書いてしまうと、経費も売上も実際より小さくなってしまいます。
記録は、月に一度まとめてやろうとすると必ずたまります。施術のあとに予約管理アプリへ金額を入れる、材料を買ったらその場でレシートを写真に撮る。この2つを習慣にするだけで、確定申告の時期がぐっと楽になります。
5. レシートと明細を保存する
記録した内容を裏づけるのがレシートです。月ごとに封筒にまとめておくだけでも十分です。ネットで材料を買ったときの領収書データも、あとで探せる場所に保存しておきましょう。
6. 翌年の申告期間に確定申告する
確定申告は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までにおこないます。2026年(令和8年)分であれば、2027年2月16日から3月15日までが期間です。納税の期限も同じ3月15日です。
青色申告特別控除は3種類あります
青色申告を選ぶと、所得から差し引ける控除が使えます。金額と条件は次のとおりです。
| 控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付したうえで、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存をおこなう |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付する(電子申告・電子帳簿保存なし) |
| 10万円 | 上記以外の青色申告者(簡易な記帳) |
複式簿記と聞くと身構えてしまいますが、いまは会計ソフトが自動で処理してくれます。65万円と10万円では、手元に残る金額が変わります。長く続けるつもりなら、最初から65万円を目指す形で始めるのが有利です。
消費税とインボイスはどう考えればいい?
「消費税も納めるの?」という不安をよく聞きます。結論から言うと、多くの方はまず気にしなくて大丈夫です。
国税庁は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として納税義務が免除される、と説明しています。基準期間とは、個人の場合は2年前の年のことです。始めたばかりの方には2年前の売上がありませんので、原則として免除されます。
ただし例外があります。個人事業者の場合、前年の1月1日から6月30日までの課税売上高が1,000万円を超えると、納税義務が生じます。売上が伸びてきたら、この点は意識しておきましょう。
もうひとつ大事なのがインボイスです。適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、売上の大小にかかわらず納税義務は免除されません。「登録するだけならタダ」ではない、ということです。
シェアサロン側から登録を求められることもありますが、登録すべきかどうかは、お客様の顔ぶれや契約内容によって答えが変わります。個人のお客様が中心のネイリストの場合、登録しないほうが有利なケースも少なくありません。迷ったら、その場で返事をせず、まず相談してください。
よくある質問
シェアサロンの席代を「家賃」として経費にしてよいですか?
売上を得るために必要な支出ですので、経費にできます。帳簿上は「地代家賃」や「賃借料」といった科目で記録するのが一般的です。科目名そのものより、金額が正しいことと、領収書や引き落としの記録が残っていることのほうが大切です。
サロンの業務委託とシェアサロンを掛け持ちしています。申告は2回する必要がありますか?
確定申告は1年に1回、1つにまとめておこないます。業務委託の報酬もシェアサロンでの売上も、どちらも同じ事業から生じた収入として合算し、そこから必要経費を差し引いて計算します。働き先ごとに分けて申告するものではありません。
開業届を出さないまま働いていました。今からでも出せますか?
提出期限は事業の開始があった日から1か月以内ですが、過ぎてしまった場合でも提出はできます。なお、開業届を出していないことを理由に確定申告が不要になるわけではありません。売上がある以上、申告の要否は別に判断が必要です。気づいた時点で早めに手続きしておきましょう。
制度の内容は国税庁のサイトで確認できますが、ご自身の契約や売上に当てはめるとなると、判断に迷う場面が出てきます。当サイトは税理士が運営するネイリスト専門の確定申告サービスです。詳しくは運営者情報をご覧ください。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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